抄録
地球温暖化に伴い,林業主要樹種であるスギが炭素吸収・固定源として注目されている。炭素吸収・固定において光合成が重要な役割を果たしており,そのメカニズムの解明が求められる。本研究では,スギにおける光に対する光合成のメカニズムを明らかにするため,昼と夜の遺伝子発現をSuppression Subtractive Hybridization(SSH)とqRT-PCRを用いて解析した。その結果,ほとんどの光合成関連遺伝子の発現量には日中と夜間で差はみられず(例 Lhca4,PRK,PetC),統計解析の結果で有意差が認められたものであっても発現量の差は2倍以下であった(例 rbcL,ChlL,PsaB)。SSHの結果からは,細胞やキナーゼ関連遺伝子の発現量が夜間に増加しているが,光合成関連ではaldolaseを除いて差がないことが明らかになった。多くの高等植物において光合成関連遺伝子は光によって発現が誘導されると報告されていることから,スギの光合成遺伝子の転写制御は特異的なものであると推定される。