抄録
私たちはクラミドモナスのいくつかの時計遺伝子に関して、プロモーター領域とルシフェラーゼを連結したレポーター遺伝子、コード領域とルシフェラーゼを連結したレポーター遺伝子を作製し,クラミドモナスを形質転換した(それぞれ時計プロモーターレポーター株、時計タンパク質レポーター株と呼ぶ)。時計プロモーターレポーター株の生物発光リズムは、mRNAの発現の位相が異なる遺伝子のプロモーターを用いたが、どれも同じ位相の振動を示した。この原因の一つは、ホスト株として用いた野生株の性質に起因していると推測された。一方、時計タンパク質ROC40、ROC75のレポーター株の生物発光リズムは、時計タンパク質の発現リズムとほぼ同じ位相を示した。例えば、ROC40は主観的夜明け前から主観的朝にかけて増加し、ROC75は主観的昼の中頃に増加する。これらの時計タンパク質レポーター株の生物発光リズムは、そのような時計タンパク質の発現リズムを極めて良く反映した。以上の結果から、ROC40とROC75の時計タンパク質レポーター株は、内在性のそれらの時計タンパク質の変動をモニターするためのレポーターとして今後の研究に有用であることがわかった。また、時計プロモーターレポーター株と時計タンパク質レポーター株が異なる生物発光リズムを示すことから、クラミドモナスにおける生物発光レポーターの複雑な制御機構が示唆された。