日本集中治療医学会雑誌
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症例報告
気管食道瘻を合併した神経因性食思不振症に対して約3年後に根治的瘻孔閉鎖を施行した1例
鯉沼 俊貴布宮 伸和田 政彦田中 進一郎小山 寛介
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2013 年 20 巻 1 号 p. 56-60

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抄録

神経因性食思不振症(anorexia nervosa, AN)に気管チューブによる気管食道瘻(tracheoesophageal fistula, TEF)が合併した症例の報告はこれまでにない。腹膜炎術後のANの28歳女性(body mass index, BMI=9.6)が,敗血症や再栄養症候群による多臓器障害のため,長期人工呼吸中に気管チューブによるTEFを合併した。大量のエアリークを許容した高頻度陽圧換気により,TEFの増悪なく誤嚥性肺炎を制御でき,多臓器障害から脱した。炎症反応の軽快後に気管切開を行い,可変長式の気管切開チューブでカフをTEFの尾側に位置させ,気道分離を約3年間継続した。栄養状態の改善を待って外科的TEF閉鎖を行い,治癒した。人工呼吸中のANに合併したTEF治療は極めて困難であり,慎重なカフ圧管理とともに,再栄養症候群などの人工呼吸を長期化させやすい合併症の予防が重要である。

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© 2013 日本集中治療医学会
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