日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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シアノバクテリアの時計タンパク質KaiC の構造からみた概日時計
*村山 依子向山 厚今井 圭子尾上 靖宏角田 明菜野原 淳志石田 達郎前田 雄一郎寺内 一姫近藤 孝男秋山 修志
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p. 0737

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抄録
シアノバクテリアSynechococcus elongatus PCC. 7942 は概日リズムを示す最も単純な生物であり、その時計機構は時計タンパク質KaiA、KaiB、KaiC からなる。3 つのKai タンパク質とATP を試験管内で混合するだけでKaiC のATPase 活性やリン酸化状態が安定な概日振動を示す。この化学振動子において時刻情報を保持し、最も重要な役割を持つのはKaiC である。そこで、私たちは分光学的手法(X 線小角散乱、トリプトファン蛍光)と変異体解析を駆使し、時刻依存的なKaiC の構造変化の可視化を試みた。KaiC はダンベル型のプロトマーがリング状に会合した6 量体を形成する。今回、KaiCのATPase やリン酸化状態に依存して、C 末側のリングが膨張・収縮することがわかった。このC 末側のリングの状態はKaiA, KaiB との結合、解離のタイミングを決め、安定な概日振動の実現に寄与すると考えられる。KaiC のArg393 はリングの膨張に必須なアミノ酸であるが、これをCys に置換するとリズムが高温で短周期化することがわかった。概日時計の基本的な特性の一つである周期の温度補償性に関して、この変異型KaiC を用いた解析についても報告する。
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© 2011 日本植物生理学会
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