抄録
シロイヌナズナの膜結合型転写因子bZIP60は通常は小胞体膜に存在し、ツニカマイシン処理等の小胞体ストレスにより核へ移行し、BiP等の小胞体品質管理に関わる標的遺伝子の転写を誘導する。動物では小胞体ストレスが緩和されることなく続いた場合、プログラム細胞死に至る。植物でも小胞体ストレスとプログラム細胞死の関係を示す複数の報告があるが、bZIP60の関与は不明である。私達は、bZIP60が動植物でプログラム細胞死の誘導剤として用いられるFumonisin B1(FB1)により転写誘導されるとともに、タンパク質レベルで切断されることを見出した。またbZIP60の遺伝子破壊株はFB1に対して野生型よりも高い感受性を示した。しかし、FB1処理によるBiP等の小胞体ストレス応答で誘導される遺伝子の転写活性化は見られなかった。野生型とbZIP60遺伝子破壊株を用いてマイクロアレイ解析を行いFB1によりbZIP60依存的に誘導される複数の遺伝子を同定した。これらはツニカマイシン処理による小胞体ストレス応答において誘導される遺伝子とは異なっており、bZIP60が小胞体ストレス応答とは異なる情報伝達系を制御することが示唆された。