抄録
COP9シグナロソーム (CSN)は核内で情報伝達を制御するタンパク質複合体である。CSN1サブユニットのN末端領域 (CSN1N)は、動物で転写抑制能を示し、植物では生存に不可欠である。CSN1Nが担う分子機構を解明するために、シロイヌナズナを用いてCSN1Nと相互作用する因子群を解析した結果、植物固有のTrihelix型転写因子と推定されるタンパク質を得た。このタンパク質は、アミノ末端側に3つのヘリックス、カルボキシル末端側にα-ヘリックスを形成することが予測され、配列の相同性からASIL1 サブファミリーに属していることが判明した。このサブファミリーのタンパク質の機能は未知なものが多く、さらにCSNとの相関は不明である。
そこで、シロイヌナズナより単離したこのタンパク質と、相同性の高い2つのタンパク質とを用いて詳細な機能解析を行なった。まずin vitro でCSN1Nとpull-downを行なったところ、これらのタンパク質はCSN1Nと特異的に結合した。さらに、T-DNA挿入変異体、過剰発現体、RNAi法による変異体を作成し、発現が増加、減少した植物を解析した結果、胚軸伸長に異常があるものが得られた。これら変異体の表現型と、それぞれの遺伝子のプロモーター活性、発現プロファイルを合わせ、これら転写因子群の機能とCSN1の相互作用が担う役割について議論する。