抄録
飢餓状態において誘導される分解系として、オートファジーが知られる。我々は、タバコ培養細胞BY-2株に、チトクロームb5と蛍光波長変換タンパク質Kikumeの融合体、Cyt b5-Kikumeを発現させ、Cyt b5-Kikumeの蛍光分布の変化及び切断、蛍光変換を指標とすることで、オートファジーによる分解及びオートファジー誘導前後におけるタンパク質合成の定量的解析を進めている。これまで、この系を用いて、細胞がリン酸飢餓状態初期においては新規のタンパク質合成を行なうこと、そしてリン酸飢餓状態の細胞では、飢餓前(オートファジー誘導前)から存在したタンパク質と共に新規に合成されたタンパク質もオートファジーにより分解されることを見出した。
今回はリン酸飢餓状態におけるオートファジーの誘導機構の解明を目指し、まずリン酸の代替肥料として期待されている亜リン酸のリン酸飢餓培地への添加実験を行なった。その結果、亜リン酸はリン酸飢餓状態において、オートファジーの誘導を遅らせる効果があることが明らかとなった。この結果についてはオートファゴソームのマーカータンパク質であるAtg8の発現パターン解析によっても示された。また、窒素飢餓状態や糖飢餓状態において亜リン酸の効果は確認できなかったことから、栄養応答性オートファジーの誘導機構は飢餓の種類によって異なることが示唆された。