抄録
植物が生産するサポニンは配糖化トリテルペンであり、抗がん作用や植物病原菌に対する抗菌活性を持つものなど様々な誘導体が知られている。またエンバクを除く単子葉類では抗菌性サポニンは生合成されていない。そこで我々はイネに抗菌性サポニンの生産能を賦与することによる耐病性の獲得を最終目的として, イネのトリテルペン生合成経路遺伝子群の同定とその分子解析を試みている。これまでに1)イネのトリテルペン生合成経路遺伝子Oxidosqualene Cyclase 遺伝子はイネゲノム中に12個存在するが, トリテルペン生合成に関与する活性型の遺伝子は見い出せなかったこと,2)トリテルペン生合成経路の次のステップであるCYP51 sterol demethylase 遺伝子もまたイネゲノム中に12個存在し、1つがステロール生合成に、また他の1つがトリテルペン生合成に関与している可能性が見いだされたことを報告した。今回、我々はOxidosqualene Cyclase 遺伝子であるエンバクのβ-amyrin合成遺伝子 AsbAS1 を導入した形質転換体イネを作出し、このイネにおいて、トリテルペン中間体及びトリテルペンの代謝物分析をGC/MSを用いて行った。その結果、β-amyrinの蓄積は確認できたが、それ以降の代謝物の合成は認められなかった。