抄録
Botryococcus brauniiは炭化水素を合成する淡水性の単細胞緑藻である。B.brauniiは現在のところ,一属一種に分類されているが,脂肪酸合成系に由来するアルカジエンやアルカトリエンを持つraceA,テルペノイド合成系に由来するbotryococceneを持つraceB,テトラテルペンであるlycopadieneを持つraceLの3つタイプが存在する。我々は,raceBであるB70株の炭化水素の基質となるイソペンテニル二リン酸(IPP)は, MEP経路から供給されることを第51回大会で報告した。本研究では, MEP経路の最初の反応であるピルビン酸とグリセルアルデヒド3-リン酸の縮合を触媒する1-deoxy-D-xylulose 5-phosphate synthase(DXS)に着目し,この酵素をコードする2個の遺伝子(BbDXS1,BbDXS2)をB70株から単離した。2個のDXS遺伝子のN末には葉緑体移行シグナルと思われる配列が存在し,中央付近にはチアミン二リン酸結合ドメインが保存されていた。この2つの遺伝子は共に,raceBだけでなくraceAの株でも発現していた。得られたcDNAを大腸菌で発現させ,組換え型酵素を作製し,その性質を検討すると共に,BbDXS1とBbDXS2の機能について考察した。