抄録
エイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)は、心疾患、動脈硬化、あるいは乾癬などを予防、改善する高機能物質として、サプリメント等に利用されている。従来、EPAおよびDHAの商業的生産には魚油が用いられているが、魚油からのEPAおよびDHAの精製には、特有の臭い、高い精製コストなどの問題点がある。そのため、現在では、新たな供給源の開発が求められている。硫黄島の潮溜まりから単離された海洋性微細藻類KU01は、その体内に多量のEPAおよびDHAを蓄積しており、新たなEPAおよびDHA供給源として期待される。本研究では、海洋性微細藻類KU01のEPAおよびDHA生産量を増加させることを目的として、光強度、温度、通気量、培地中のpHおよび窒素源が生育量とEPAおよびDHA含有量に及ぼす影響について検討した。その結果、窒素源として0.5 mM CH4N2Oを添加した培地を用いて、pH 7.0、光強度70 μE/m2s、温度25℃、通気量150 mL/minの条件で培養した際に最大生育量を示すことが判明した。一方、脂肪酸含有量は、すべての条件において有意な差異が見られなかった。最適条件下において培養した際の海洋性微細藻類KU01のEPAおよびDHA生産量は、それぞれ6.1および1.3 mg/Lとなり、コントロール条件下のそれらと比較して約2.5および1.6倍となった。