抄録
活性酸素種(ROS)を介した酸化的シグナリングは種々の環境ストレス応答に重要な役割を担っている。これまでに我々は、葉緑体由来の酸化的シグナリングの分子機構を明らかにするために、チラコイド膜結合型アスコルビン酸ペルオキシダーゼ(tAPX)発現の誘導抑制系を用いて、葉緑体由来のH 2O 2に応答する遺伝子群を同定してきた。そこで今回は、同定した遺伝子群を欠損させたシロイヌナズナラインよりパラコート感受性変異株を選抜し、原因遺伝子の機能解析をおこなった。
遺伝子欠損株(241ライン)のパラコート感受性評価により、いくつかのパラコート非感受性変異株(psi)および高感受性変異株(pss)が得られた。それらの原因遺伝子の多くは転写因子やプロテインキナーゼをコードしており、発現データーベースより病原菌応答性を持つことが示唆された。したがって、PSIsおよびPSSsは光酸化的ストレスと病原菌応答の両方に機能することが示唆された。野生株への強光照射あるいはパラコート処理により、ほとんどのPSIおよびPSS遺伝子群の発現は上昇した。現在、各変異株のサリチル酸やエリシター処理に対する感受性を評価するとともに、転写因子をコードするPSS遺伝子の機能解析を進めている。