抄録
PCaP1 (plasma membrane associated cation-binding protein-1)は、シロイヌナズナで発見されたタンパク質で、N-ミリストイル化を介して細胞膜に結合している。Ca2+、 Cu2+、PtdInsPs、 CaM/Ca2+ との結合能を持つ(Nagasaki et al. 2008a, b)。本研究ではPCaP1の細胞内局在と動態を明らかにするため、PCaP1-GFP融合タンパク質をシロイヌナズナに発現させ、共焦点レーザ顕微鏡で観察した。PCaP1は植物のほぼ全ての組織の細胞膜に観察された。PCaP1は銅過剰およびflg22処理に応答してmRNA量が増え、かつPCaP1-GFPの蛍光強度は増加した。また、PCaP1は気孔孔辺細胞の外輪部にのみ偏在した。この偏在に注目し野生株とpcap1株で気孔開度を測定したところ、暗条件においてpcap1では気孔が閉じにくくなる現象が見られた。さらに両植物の葉の気孔コンダクタンス測定を行った。また、気孔開閉に関与する条件として暗条件および高CO2濃度条件下での生育を比較した。以上の結果よりPCaP1は細胞膜に安定に結合し、PtdInsPs や CaM/Ca2+と相互作用して、機構開閉も含む細胞内の様々なシグナル伝達に関与していると考えられる。