抄録
植物は、生体防御応答、形態形成等の過程で積極的に活性酸素種(ROS)を生成する。ROS生成酵素NADPH oxidaseの本体としてrespiratory oxidase homolog (rboh)が同定されており、シロイヌナズナには、AtrbohA-Jの10種のアイソザイムが存在する。分子遺伝学的な解析から、AtrbohD, AtrbohF は生体防御応答や環境応答、AtrbohC/RHD2 は根毛の先端伸長、AtrbohB は種子発芽に関与することが示唆されており、10種のAtrbohの機能分担が想定される。そこで、様々な局面における積極的なROS生成制御機構を解明するため、AtrbohA-Jの網羅的比較解析を進めている。
ヒト培養細胞を用いた異種発現系解析の結果、AtrbohC, AtrbohDは、EF-hand様領域へのCa2+ 結合と、自身のタンパク質リン酸化により相乗的に活性化されることが明らかになった。そこで、AtrbohA-Jの10種について、ROS生成活性の比較解析を進めている。また、AtrbohA-J遺伝子についてpromoter::GUSを構築し,発現部位の比較解析を進めている。各遺伝子の発現部位、各アイソザイム間の活性や制御機構を比較し、Atrbohの機能分担について議論する。