抄録
青色光受容体フォトトロピンは、最終的に細胞膜H+-ATPaseを活性化することによって気孔開口の駆動力を形成する。我々はすでに、ソラマメ孔辺細胞においてタンパク質脱リン酸化酵素であるプロテインホスファターゼ1(PP1)が、フォトトロピンからH+-ATPaseまでのシグナル経路を正に制御することを明らかにした。本報告ではPP1の役割をさらに詳細に調べるためシロイヌナズナを材料に用いた。まず、膜透過性のPP1阻害剤であるtautomycinを用いた実験により、シロイヌナズナにおいてもPP1がH+-ATPaseの上流で青色光依存の気孔開口に関与することを確認した。tautomycinは表皮における青色光依存の気孔開口と孔辺細胞プロトプラストからの青色光によるH+放出を阻害した。しかし、細胞膜H+-ATPaseの活性化剤fusicoccinによるH+放出は阻害しなかった。以上の結果から、孔辺細胞にはPP1により脱リン酸化される基質タンパク質が存在するはずである。そこで、シロイヌナズナおよびソラマメ孔辺細胞を材料として青色光依存的にリン酸化レベルの変動するタンパク質の同定を試みている。タンパク質の分離とリン酸化の検出には2D-DIGEを、タンパク質同定にはLC-MS/MSを用いて実験を進めており、得られた結果を報告する予定である。