抄録
植物は、生育環境への適応戦略として光受容体を用いている。フィトクロムは赤色光と遠赤色光(FR)の光受容体であり、フィトクロムA-C(phyA-C)の3種が知られる。なかでもphyAは特殊で、赤色光よりむしろFRに対して強い応答性を示す。我々の研究グループではフィトクロム分子を4つの領域(N-PAS, GAF, PHY, C末端)に分け、phyA/phyB間のキメラ遺伝子(16通り)を構築し、その生理活性を調べた(小野他、第50回日本植物生理学会年会、2009年)。それによると、N-PASさえphyA配列であるれば連続FR光で核蓄積が観察された。一方、核内でのシグナル伝達には、N-PASに加えてPHYのphyA配列が重要であった。本研究では、これらの成果を踏まえさらに詳細な解析を進めた。まず、上記のN-PASを3つにわけ、phyA配列をphyB配列で置き換えたコンストラクトを構築し、残りのphyB配列へとつないだ。予備的な結果によれば、N-PAS領域内のN末端突出がphyA配列であれば、他の全ての部位がphyB配列でもFRで核蓄積が見られた。従って、この領域が遠赤色光による核移行誘導に重要な部位であると考えられる。また、PHYドメインの役割をさらに詳しく調べるため、PHYドメインのみをphyA配列としたキメラ分子に核移行シグナルをつないだものを発現させその性質を解析している。