抄録
陸上植物は固着性であるため、環境ストレスに直接さらされており、種々の遺伝子発現や代謝を調節して様々な環境に適応している。低温ストレス環境下においても、多くの低温誘導性遺伝子が発現していることや糖やアミノ酸の蓄積量が増加していることが報告されている。シロイヌナズナにおいては、低温誘導性転写因子DREB1A/CBF3についての研究報告が数多くあり、DREB1Aを恒常的に過剰発現させた形質転換植物は、低温ストレス耐性が向上することから、DREB1Aが制御する下流遺伝子は、低温耐性の獲得において重要な役割を果たしていると考えられた。
我々は、DREB1Aが制御する機能未知のタンパク質ファミリーであるCOR413ファミリーに注目して研究を行った。このファミリーに属する3遺伝子IM1、IM2.1、PM1は低温で誘導されることが確認された。また、GFPタンパク質を利用して、この3遺伝子がコードする各タンパク質の細胞内局在を調べた結果、IM1とIM2.1は葉緑体膜に局在していることが明らかになった。一方PM1は小胞体に局在していると考えられた。さらに各遺伝子のT-DNA挿入型変異株の観察を行ったところ、im1およびim2.1変異体は低温条件下で野生型株と比較して、アントシアニンをより多く蓄積することが示された。そこで、これらの変異株を用いて、マイクロアレイ解析やメタボローム解析を行った。