抄録
Heat shock transcription factor (HSF)は真核生物に広く保存された転写因子であり、高温ストレス応答に関与している。HSFは動物には数個程度しかないのに対し、高等植物にはA、B、Cの3つのクラスに分類される数十個が存在している。そのため、植物内ではHSFが複雑なネットワークを形成している可能性が考えられる。BクラスのHSF(HSFB)は植物特異的な構造を持っているが、その機能については不明な点が多い。そこで、我々はシロイヌナズナを用いてHSFBの高温ストレス応答における機能解析を行った。シロイヌナズナは21個のHSFを持ち、そのうちHSFBは5個である。HSFBの高温ストレス時における転写産物の蓄積パターンを解析したところ、HSFB1、HSFB2A、HSFB2Bの3つについて高温誘導性が確認された。また、プロトプラストを用いた一過的発現実験でHSFBがレポーター活性に与える影響を解析したところ、高温誘導性HSFBは転写抑制能を示した。これらのことから、HSFBは高温ストレス応答遺伝子の転写を負に制御することで、微妙な転写レベルの調節やストレス応答の終結に関与している可能性が考えられた。そこでHSFBの過剰発現体やT-DNA挿入変異体の高温ストレス応答について野生型との比較を行った。