日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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硫黄同化に関与するATPスルフリラーゼ遺伝子は転写開始点制御により葉緑体型と細胞質型の酵素をコードする
*吉本 尚子関口 愛高橋 秀樹斉藤 和季
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p. 0852

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抄録
植物の硫黄同化系の第一反応は、ATPスルフリラーゼによる硫酸イオンのアデノシン5’-ホスホ硫酸への変換である。シロイヌナズナゲノムに存在する4つのATPスルフリラーゼ遺伝子(ATPS1ATPS2ATPS3ATPS4)は全て葉緑体移行配列を含むが、細胞分画実験の結果からシロイヌナズナは葉緑体と細胞質の両方にATPスルフリラーゼ活性を持つことが報告されている。本研究では細胞質型ATPスルフリラーゼ遺伝子の同定を目的とし、ATPS-GFP融合蛋白質をシロイヌナズナに発現させた。その結果、ATPS1、ATPS3、ATPS4はプラスチドに局在するが、ATPS2は細胞質とプラスチドの両方に局在することが示された。ATPS2のコード配列は、5’側の葉緑体移行配列と3’側のATPスルフリラーゼ酵素活性配列で構成される。RLM-RACE法による転写開始点解析の結果、ATPS2遺伝子からは完全長の葉緑体移行配列を含む長いmRNAと、葉緑体移行配列を一部欠損する短いmRNAが産生されることが示された。ATPS2遺伝子の葉緑体移行配列切断部位の直前には、インフレームのATGコドンが存在する。長いmRNAからは葉緑体移行配列前のATGコドンからの翻訳により葉緑体局在性の、短いmRNAからは移行配列切断部位直前のATGコドンからの翻訳により細胞質局在性のATPS2蛋白質が作られると考えられる。
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© 2011 日本植物生理学会
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