抄録
パルプ生産に適した植林木Eucalyptus globulusは、挿し木による増殖が非常に困難な樹種であり、通常、種子から生産された実生苗で植林される。実生苗は各々異なる遺伝的バックグランドを持つため、成長や材の性質に差が見られる。これまでに、E.globulusの不定根の形成過程において、高濃度CO2(1000 ppm)を供給することで、発根率が上昇し、根系も発達することを見出している。高濃度CO2条件下にすることで、rbcSの発現量は増加した。また、オーキシン極性輸送阻害剤である1-N-naphthylphthalamic acidを加えることによって、濃度依存的に不定根形成を阻害した。不定根形成には、光合成活性の促進とオーキシンの極性輸送が重要と考えられた。
今回、酸化型グルタチオンの不定根形成に対する効果を調査した。酸化型グルタチオンはカルビン回路のフルクトース-1,6-ビスリン酸アルドラーゼ遺伝子の発現を制御することが報告されている。E.globulusで酸化型グルタチオンを施用した結果、約3倍発根率が増加した。また、DR5-GUSが導入された発芽後7日のシロイヌナズナに対して、酸化型グルタチオンを施用した結果、施用していない対照と比較して、強いGUS活性が見られた。以上のことから、GSSGを施用することで、内生のオーキシン量が上昇する可能性が示された。