抄録
Fistulifera sp. JPCC DA0580株は高いオイル生産性を有する海洋性ケイ藻であり、我々は現在、本藻を利用したバイオディーゼル生産を目指して研究開発に取り組んでいる。その一環として、本研究では本藻の増殖特性について1リッター程度の培養規模で調べた。まず培地成分について検討を行い、先行研究に比べて10倍以上の生産性が得られる組成を見出した。また、本藻の生育至適温度は25~30℃であり、35℃までの高温にも耐性を示した。培地pHについては7以上9までのアルカリ側に耐性であった。さらに、培地の塩濃度については、2~8倍に希釈した海水においても通常海水とほぼ同等の生育を示した。通気CO2濃度については0.5 %が至適であった。これら培養条件を至的化した場合の生産性は6.6 g dry weight/liter/weekであり、ラボスケールにおいてはプロジェクト目標値4 g dry weight/literを達成した。また、本研究の結果から、水資源問題への対応策として無尽蔵な海水とアルカリ排水の混合利用可能性や、屋外培養において問題となる高温への耐性能、さらに、通気CO2コストの削減なども期待できる株であることが示唆された。[本研究はJST-CREST「二酸化炭素排出抑制に資する革新的技術の創出」研究領域(2010年度)の助成によるものである]