抄録
私達はこれまで、効率的に新しい花の形質を創ることを目的に、花器官の発達および分化に重要な機能を有するシロイヌナズナの転写因子に転写抑制ドメイン(SRDX)を付加し、これをトレニアに導入してきた(CRES-T法)。この手法により、多種多様な組換えトレニアが作出可能であることが明らかとなった。一方で、得られた組換えトレニアの中には、開花に至らなかったり葉に形質変化が起こるなど、期待しない形質も観察された。CRES-T法で用いてきた35Sプロモーターを花器官プロモーターに換えることで、これらの問題を回避するのみならず、35Sプロモーターでは見られなかった形質の付与が可能になることが期待された。本研究では、シロイヌナズナ由来MYB24およびTCP3のキメラリプレッサーを花器官プロモーターで発現させることで、トレニアで新しい花の形質の創出に至ったことから、ここに報告する。MYB24-SRDX遺伝子は、35Sプロモーターでは花が咲かずに葉で形質変化が見られたが、花器官プロモーターにより葉での形質変化を回避するのみならず新しい形質を付与するに至った。さらに、TCP3-SRDX遺伝子を5種類の花器官プロモーターで発現することで、それぞれの花器官プロモーターに特徴的な多様な花の形質の作出に成功した。
本研究は、生研センターイノベーション創出事業によるものである。