抄録
MCA1はシロイヌナズナのCa2+透過性機械受容チャネル候補として単離された遺伝子で、MCA2はMCA1の唯一の相同遺伝子である。シロイヌナズナの根において、mca1では変異によるCa2+取り込み量への影響がわずかであるのに対し、mca2では取り込みが大幅に低下する。また、MCA1が根の全域で発現しているのに対し、MCA2は細胞伸長域でのみ発現しており、根端において異なった発現パターンを示す。
今回、MCA1とMCA2がシロイヌナズナの根端成長に及ぼす影響を細胞レベルで定量的に明らかにするため、その変異体の根端成長について動力学的解析を行った。mca1とmca2の解析を行った結果、mca1では変異による根端成長への影響がほとんどなかった。一方で、mca2では野生型に比べて細胞伸長域における体積増大速度と細胞体積に顕著な低下が見られた。この低下が生じた領域はMCA2の発現域と一致した。さらに二重変異体mca1mca2についての解析を行ったところ、mca2と同じ領域で体積増大速度と細胞体積に低下が見られたが、その低下の幅はmca2より小さかった。これらの結果から、MCA2によるCa2+取り込みが根端成長に直接的な影響を与える一方で、おそらくMCA1による微量のCa2+取り込みが何らかのシグナルとしての役割を果たし、二重変異体の根端ではその影響が顕在化している可能性が示唆される。