抄録
オートファジーは生物に広く存在する細胞内成分の分解経路である。植物におけるオートファジーでは、その過程で生じたオートファゴソームあるいはオートリソソームと呼ばれる膜小胞が最終的に液胞と融合すると考えられている。これにより液胞膜面積が増大し液胞の拡大が起こると予想される。そこで我々は液胞の拡大が細胞の伸長を引き起こすと仮定しこれを検証した。
シロイヌナズナ芽生えの根端5 mmを切り取り、液体培地で2~3日間培養して1日毎にその長さを測定した。ショ糖を含む培地で培養すると根は伸長成長したが、培地からショ糖を抜くと根の伸長はほとんど見られなかった。このことは、この実験系における根の伸長成長が培地のショ糖に依存して起こっていることを示している。このショ糖依存の成長は、オートファジー阻害剤の3-メチルアデニンや、プロテアーゼ阻害剤のE-64d により阻害された。また、オートファジー関連遺伝子破壊株(atg5)は野生株と比べ根の伸長速度が遅かった。以上の結果はオートファジーが細胞伸長に寄与しているということを示している。