抄録
Zrt/Irt-like protein (ZIP)は細胞内への金属取り込みを担う重要なトランスポーターファミリーの一つである。これまでに重金属集積植物の重金属耐性・集積性において重要な役割を担っていることが示唆されているが、その詳細は明らかにされていない。今回我々はNi集積性植物であるタカネグンバイから単離したZIPトランスポーターTjZNT1のNi耐性能における役割について報告する。TjZNT1はその塩基配列および酵母発現系を用いた機能解析の結果から、シロイヌナズナのZn/Cuトランスポーター遺伝子であるAtZIP4のオーソログであることが示された。また、タカネグンバイにおいてTjZNT1プロモーターGUS解析を行った結果、根の中心柱および葉脈にGUSシグナルが観察され、AtZIP4と同様にZn/Cuの根から地上部への輸送に機能していることが示唆された。定量的RT-PCRの結果からタカネグンバイにおけるTjZNT1の相対発現量はシロイヌナズナにおけるAtZIP4のおよそ1000倍であることが示され、タカネグンバイはTjZNT1を恒常的に高発現していることが示された。さらに、TjZNT1を高発現した酵母細胞は高いNi耐性を示し、これはZn/Cuを細胞内へ供給することがNi耐性へ貢献しうることを示唆している。現在、TjZNT1導入シロイヌナズナのNi耐性能を検討している。