抄録
シロイヌナズナのmetal tolerance protein 1(MTP1)は液胞膜に局在し、細胞質の過剰な亜鉛を液胞へ能動輸送するZn2+/H+ exchangerである。MTP1は6回膜貫通型タンパク質で、4番目と5番目の膜貫通領域の間の細胞質側にHis残基25個をもつHis-rich loopが存在する。このHis-rich loopの大部分を欠失させると亜鉛輸送活性が上昇し亜鉛への親和性が低くなり、亜鉛に加えてCo輸送能を獲得する(JBC 2008, 283:8374)。
本研究ではMTP1のHis-rich loopの個々のHis残基の役割を明らかにするために、Hisを5個ずつAlaに置換した変異MTP1を作製し、Saccharomyces cerevisiae の亜鉛感受性株Δzrc1cot1に異種発現させた。それらの酵母を、亜鉛を添加した寒天培地・液体培地での機能相補実験を行い、置換変異を加えたMTP1の亜鉛輸送能を解析した。結果、置換した部位毎に亜鉛過剰条件での酵母の生育が異なった。これはHis-rich loopの25個のHisはそれぞれ亜鉛輸送能への関わり方が異なることを示唆している。さらにCo、Ni、Cd、Mnを含む寒天培地でも変異MTP1導入酵母の耐性を調べ、置換部位、金属毎に生育の上昇あるいは下降が見られたのでその結果についても報告する。