抄録
RSOsPR10は、塩や乾燥処理によりイネの根に特異的に発現が誘導されるタンパク質として同定された。RSOsPR10はJAとACC により発現が誘導され、その誘導がSAにより抑制されることが示されている。RSOsPR10の発現経路に関わる情報伝達因子に関する解析を行ったところ、JAを介さない経路の存在が示唆された。一方、JA、ETの下流で働くOsERF1がRSOsPR10の誘導に関与することが推定された。さらに、エリシター応答性bZIP型転写因子OsTGAP1の発現が、塩、JA処理に対するRSOsPR10の誘導に同調して一過的に増加する傾向が観察された。これらのことにより、RSOsPR10の発現には複数の因子が関与していると予想される。
RSOsPR10 遺伝子上流1.9kbまでには根特異性、ストレス応答性に関する制御領域が見られず、データーベース解析で2-3kb付近にERF1、TGAP1を初めとする転写因子の結合配列を複数確認した。そこで、上流2、3、4kbをGUSに繋いだコンストラクトを導入した形質転換イネを作成し、発現制御に関わるシス配列の存在について検討を加えている。また、プロモーター::LUCコンストラクトを導入した培養細胞系での一過的発現を観察する実験系の確立も進めている。