抄録
MAPKカスケードは真核生物に広く保存されており、環境ストレスや病原菌応答、ホルモンシグナル、細胞分裂応答において、重要な役割を果たす事が報告されている。シロイヌナズナMAPKファミリーにおいて、もっとも大きいサブグループを形成するグループDのMAPKは、上流因子であるMAPKKによるリン酸化部位が植物にしか存在しないTDYモチーフを持ち、C末端が長いという特徴的配列を持つ。本研究では、グループDの一つであるMPK8に着目して解析を行っている。傷害ストレスにおいて、MPK8はMAPKKの一つであるMKK3によってリン酸化を介して活性化されることを明らかとした。また、MPK8はカルシウム依存的にカルモジュリン(CaM)と結合し、活性化される。この活性化には、TDYのリン酸化は関与しない。更にCaMによるMPK8の活性化は、Ca2+/CaMの結合によってのみ制御されていることを明らかにした。傷害によるMPK8の活性化は、リン酸化とカルシウムシグナルの両方を必要とすること、またMPK8 pathwayはNADPH oxidaseの一つであるRbohDの転写を抑制し、ROSのシグナル伝達と蓄積を負に制御することを遺伝学的に明らかとした。CaMとMKK3の両方で活性化されるMPK8の制御機構について議論する。