抄録
リン欠乏条件やアルミニウム障害において植物は根から様々な代謝産物を分泌し、その環境に適応していることが知られている。特に有機酸は土壌中の難利用性リンの可溶化及びアルミニウムの無毒化に関与している。しかしながら、これまでにそれぞれのストレス、またこれらのストレスの相互関係での浸出物を網羅的に解析した報告はない。そこで本研究では、リン欠乏条件とアルミニウム障害におけるシロイヌナズナの根浸出物のプロファイルを明らかにすることを目的として実験を行った。
シロイヌナズナ(Col-0)を1/2MS通常培地とリンを含まない培地で19日間無菌的に栽培した。その後、アルミニウムを含む溶液および含まない溶液で3時間根浸出物を回収し、その回収液に含まれる低分子量有機物をGC/MSを用いて網羅的に解析した。リン欠乏、アルミニウム障害両方において浸出物中のアミノ酸、有機酸、糖類の多くは増加する傾向を示した。有機酸に着目すると、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸についてはリン欠乏とアルミニウム障害両方で増加が確認された。一方でクエン酸、乳酸はアルミニウム障害には応答せず、リン欠乏でのみ増加していた。これらの結果から根からの浸出物のプロファイルはリン欠乏とアルミニウム障害において異なっており、双方のストレスが相互に関係していることが示唆された。