抄録
セレン(Se)は、ヒトを含む動物にとって微量必須元素の1つである。しかし、その過剰摂取は中毒を引き起こす。その毒性のために環境中のセレン汚染は問題となる。セレン汚染土壌からセレンを除去する有効な方法の1つとして、植物を利用したセレン汚染環境浄化が注目されている。本研究では、すでにセレン酸耐性が報告されている硫酸輸送体SULTR1;2ノックアウト変異体であるsultr1;2とその野生株WSを材料として用い、セレン酸に対する耐性、セレン蓄積能、Se代謝関連遺伝子の発現等を精査した。
sultr1;2はWSよりもセレン酸に対して耐性であった。セレン酸存在下においてsultr1;2の総セレン量は、WSと同程度あり、また、有機セレン量の割合が増加する傾向が見られた。また、遺伝子発現解析の結果より、ジメチルセレナイド(Me2Se)への代謝を触媒する酵素の遺伝子発現が増加している傾向が見られた。それらの結果より、sultr1;2のセレン酸耐性機構は、Kassisらが結論する硫酸輸送体の欠損によるセレン酸の取り込みの減少よりも、植物体内でのセレン酸からジメチルセレナイドへの変換が早められたことによる無毒化と大気中への放出が原因である可能性が示唆された。