抄録
我々はイネの根における遺伝子発現情報の整備を目的とし、Laser Capture Microdissectionとマイクロアレイ解析を用いた根の網羅的遺伝子発現プロファイリングを実施した。水耕装置で10日間育成した日本型イネ品種日本晴の冠根を、根冠、分裂帯、伸長帯、根毛帯、成熟帯に分割し、さらに伸長帯/根毛帯と成熟帯の表層、皮層、中心柱部位をそれぞれ分割し採取した。採取したサンプルからRNAを抽出し、イネ4×44K マイクロアレイRAP-DB(Agilent)を用いた1色法によりマイクロアレイ解析を行った。得られた遺伝子発現パターンの類似性をもとに遺伝子を分類し、各部位で特異的に高い発現を示す遺伝子群を抽出した。根冠ではムシゲルの合成を制御すると考えられる炭素代謝関連遺伝子が、分裂帯では細胞分裂・分化に関与するDNA複製・翻訳関連遺伝子が、伸長帯・根毛帯では水や無機栄養分の輸送関連遺伝子が多く含まれていた。また、根毛が形成される伸長帯/根毛帯の表層部位、側根形成が開始される中心柱部位で特異的に高い発現を示す遺伝子群を見出した。以上の結果から得られた根の詳細な遺伝子発現情報は、根の各部位における特異的遺伝子発現やその機能を明らかにするための有用な情報基盤になると考えられた。得られた発現情報は、遺伝子発現データベース「RiceXPro」から公開していく予定である。