抄録
野菜などの作物では、環境適性・病虫害耐性などを求める生産ニーズおよび急速に多様化する消費ニーズに対応するため、“より良い”品種を“より早く”育成することが求められている。形質の異なる多様な遺伝資源を作出・整備しておくことは、育種上重要であるとともに、変異系統のゲノム・分子生物学的な解析結果の蓄積によって新たなニーズへの迅速な対応に応用できると考える。我々は、ゲノム機能研究のための独自のツールの整備を目指し、重イオンビーム照射によるトマト変異誘発系統の整備を進めている。
窒素イオンもしくは炭素イオンビームについて、異なる線エネルギー付与(LET)と吸収線量の照射を行い、子葉展開率および生存率を調査した。その結果、炭素イオンビーム照射では、LET 50-60 keV/mm、吸収線量100Gyにおいて本葉展開率の減少が見られはじめた。また外観異常を調査した結果、同条件の照射において外観異常のピークが見られた。今後、100Gy付近で詳細に条件を検討することによって、より至適な変異誘発条件を明らかにできる可能性がある。
本研究は、文部科学省原子力基礎基盤戦略研究イニシアティブおよび野菜茶業研究所所内プロジェクトとして実施された。