日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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日本植物生理学会賞 維管束形成機構の解明
*福田 裕穂
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p. A0001

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抄録
植物は分化の柔軟性に代表されるユニークな組織構築のしくみをもつ。この植物の組織構築を明らかにするために、優れたモデル系として維管束形成に着目し、一貫して維管束形成機構の研究を進めてきた。特に、組織構築のベースにある細胞分化と細胞間の相互作用に着目して解析を行った。細胞分化に関しては、できるだけシンプルな実験系を求め、ヒャクニチソウ葉肉単細胞を用いた道管細胞分化誘導培養系、さらにはシロイヌナズナ培養細胞を用いた道管細胞分化誘導系を開発した。これらの培養系を用いて、トランスクリプトーム解析、細胞学的解析、生化学的解析を行うことで、維管束形成に関する多くの鍵因子を見いだした。この中には、1遺伝子の導入により原生木部道管、後生木部道管を誘導できるVND7/VND6マスター遺伝子や、道管分化の促進因子ザイロジェン、前形成層の維持を支配する篩部分泌CLEペプチドTDIFが含まれる。これらの培養系で得られた鍵因子の生体内での働きを、シロイヌナズナを用いて遺伝学的、組織化学的に解析することにより、篩部と木部のクロストークなど、新たな維管束組織構築の分子機構が明らかになってきた。本発表では、その主な成果を話すとともに、維管束形成の解析から見えてきた植物の組織構築のしくみについて考えたい。
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© 2011 日本植物生理学会
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