抄録
カドミウムは食事の中に微量に含まれており、生物学的半減期が長いために徐々に加齢と共に蓄積していく。カドミウムはメタロチオネインという金属ー蛋白複合体として無毒化され肝臓や腎臓に加齢と蓄積していく。しかし、蓄積量が臨界濃度を超えると複合体から遊離したカドミウムが腎尿細管細胞に障害を与え、低分子蛋白質の再吸収機能が低下し、低分子蛋白尿が顕在化する。さらに、腎性貧血や骨粗鬆症、骨軟化症と進展し、富山県で発生したイタイイタイ病の病態となる。一般の日本人のカドミウムの経口摂取量はJECFAの定める暫定耐容月間摂取量より十分低いが、土壌カドミウム汚染地域の農業従業者にとっては、健康影響を配慮する必要があるほどの曝露安全域の幅が狭いことを留意しておく必要がある。