日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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イネ細胞壁多糖の改変
*石井 忠
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p. S0018

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抄録
最近、化石資源の枯渇や地球温暖化対策の一環として植物材料からエタノールを製造することが急務となっている。現在、エタノールはデンプンや砂糖から生産されているが、これらは食糧と競合して穀物価格の上昇などを生じ、大きな問題になっている。そこで食糧と競合しないイネワラ、サトウキビのしぼりかすなど農産廃棄物からエタノールを生産することに大きな期待が寄せられている。
植物細胞壁は地球上に存在する最も豊富で再生産可能な有機化合物である。これまで細胞壁は木材、パルプ、繊維、工業原料などとして古くから利用されてきた。細胞壁はセルロース、ヘミセルロース、リグニンなどから構成される。単子葉イネ科植物の主要なヘミセルロースはアラビノキシランであり、セルロースやリグニンと結合して強固な細胞壁を形成している。そのため、セルラーゼ糖化されにくいので、利用するには酸あるいはアルカリなどの化学試薬を用いた前処理が必要であるが、これらの前処理は費用がかかり、環境への負荷が大きい。この課題に対して、細胞壁を人為的に改変して易分解性の細胞壁を持つ植物材料を作出することは1つの解決法である。そこで、イネ科植物の細胞壁構築に重要な役割を果たしているアラビノキシランについて、化学構造、生合成経路を示し、その改変の可能性について紹介する。
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© 2011 日本植物生理学会
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