抄録
光合成生物は多様な起源を有する。シアノバクテリアが始原真核生物に共生して生まれた3種の一次植物(緑色植物、紅色植物、灰色植物)がさらに真核生物に共生したのが二次植物である。緑色植物起源のユーグレナ植物、クロララクニオン植物、クリプト植物と、紅色植物起源の珪藻などの不等毛植物、ハプト植物、渦鞭毛植物がある。光合成機能を有するものと、進化の過程で光合成機能を失った生物群の双方を含み、細胞機能は多くの変化に富んでいる。一方、藻類は酸素発生型光合成機能を有する生物群の総称として用いられており、二次共生藻類は、酸素発生型光合成機能を有する二次植物の意味である。本発表では、二次共生藻類の炭素代謝を概観するとともに、ハプト植物の新規のCO2固定・炭素代謝機構など、緑色植物には見られない代謝の姿を紹介する。さらに、二次共生藻類は太古には石油や石灰岩形成の起源生物であり、現世の海洋でもブルームを形成し、大気中CO2を海底に隔離する生物ポンプとして重要な働きをしている。地球進化における変遷と併せ、二次共生藻類の炭素隔離やバイオ燃料生産など、未来の低炭素社会への貢献の可能性についても紹介する。