抄録
里親制度の推進に伴い,里子の発達や心の問題の予防と改善を実現するための里親支援が求められている.本研究では心理職と医師が協働し,里子に対する精神医学的アセスメントを含めた里親家庭の包括的アセスメントを行い, 里子への適切な対応や養育方法を伝える全9回の里親支援プログラムを作成し,その効果のパイロットスタディを目的とした.参加した里親家庭は9世帯で里子6名に脱抑制性愛着障害傾向が認められた.その他,境界域知能,特定不能の不安障害,精神症状が認められなかった里子が各1名ずつ認められた.結果で示した3症例は「ぐずりや怒りへの対応」,「生い立ちの認識に関する整理」,「能力に見合った学習の進め方」等について扱い改善に至った.事前事後に里母が回答した里子に関する評価であるCBCLの総合得点,外向得点に有意差が認められた.また,里子の回答したTSCC-Aに有意差が認められ,本プログラムによる効果が示唆された.今後,無作為抽出試験等において検討を重ねることが求められる.