抄録
注意欠如・多動性障害(ADHD)にみられる不注意や衝動性を検出するための補助的診断検査として日本版線画同定課題の標準化を実施し,児童精神科にてADHD疑いにて来院した臨床群に適用を試みた.対象は定型発達を示した年長5歳児から高校生以上10歳代321名,ADHD疑いの受診例は87名である.その結果,定型発達児では項目識別力が高い群と低い群,項目困難度が高・中・低の3群に課題特性を選別することができた.さらに,ADHD評価スケール(ADHD-RS)とIntegrated Visual & Auditory Continuous Performance Test(IVA)の成績に基づき操作的に分類したADHD疑い例と非ADHD疑い例の2群にて,本検査指標である正答数,初発反応時間,お手つき数がADHD-RSとIVAの結果を予測する確率をROC解析にて検討した.その結果,IVAの行動指標特性を線画同定課題がよく描出することが分かり,線画同定課題がADHD診断の補助的指標となる可能性が示された.