抄録
不登校の事例において,発達障害など器質的な要因が明確であり,教育現場での理解も得られる場合,特別支援教育の枠組みでの対応や放課後等デイサービスなどを利用することで居場所を得られれば,深刻な事態となることはない.一方,不登校が長期化する事例の中に,周囲との安定した関係を形成することが困難で,自傷行為や逸脱した行動などが続くため,対応が困難となる事例がある.そのような事例では一過性の精神病様症状体験を呈することもあり,切迫した自殺企図や極端に逸脱した行動に至る場合には,到底教育現場だけでは対応できなくなる.そういった事例の背景には,外傷体験があることが多く,一般的な不登校の対応や対症的な医療の対応のみでは決定的な支援とならない.こういった不登校事例にみられる外傷の影響を評価し対応することは,不登校の対応以前に必要なことであると思われ,単機関での支援のみではなく他機関が連携した総合的な支援が必要と考えられる.