抄録
1994年から2021年に名古屋市立大学病院小児科心理・発達外来を新規受診した自閉スペクトラム症児(以下,ASD児)の経年的変遷を,診療録をもとに後方視的に検討した.2012年の報告では初診患者の73.4%が広汎性発達障害児であったが,2021年では初診患者の中のASD児の割合は54.6%であり,減少していた.また,初診時主訴の変化としては「発達や言語の遅れ」は減少した.これらの経年的変化は,発達障害に対する社会認識の変化や支援体制の変化によるものと考えられた.受診患者が発達外来に求めるニーズも時代とともに変化している.発達外来を設ける施設の増加や患者数の増加からも,今後大学病院に求められる役割を改めて検討する必要がある.