小児の精神と神経
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全般的発達遅滞に対し頭部MRI検査で白質病変を認め,極長鎖脂肪酸が上昇し,自閉スペクトラム症の臨床像を呈した1例
森本 航
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2024 年 64 巻 3 号 p. 245-250

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抄録
精神運動発達遅滞が主訴で,頭部MRIの白質病変および極長鎖脂肪酸上昇を認めた自閉スペクトラム症の男児例を報告する.1歳0か月の時点で粗大運動面は生後8か月相当であった.1歳7か月時に独歩を獲得したが言語発達遅滞も認めたため同時期に頭部MRIを実施し,大脳両側脳室後角白質に異常信号域を認めた.副腎白質ジストロフィーを疑い,精査の結果ABCD1遺伝子のミスセンスバリアントと血中極長鎖脂肪酸の上昇を認めたが確定診断は保留している.その後コミュニケーションや集団行動の苦手さ,エコラリア,こだわり,常同行為,偏食等が目立つようになり3歳6か月時に自閉スペクトラム症と診断した.遺伝子検査の結果解釈や顕著な精神運動発達遅滞を示す児への頭部MRIの適応に関しては議論の余地があるが,基礎疾患の有無を常に念頭に置いて診察し,副腎白質ジストロフィーの乳幼児期の早期徴候を検討していくことは意義があると考える.
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© 2024 一般社団法人日本小児精神神経学会
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