日本小児放射線学会雑誌
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症例報告
広範な深頸部・縦隔気腫をきたした歯ブラシによる咽頭損傷の一例
源川 結 大森 多恵大坂 渓𠮷橋 知邦平井 聖子玉木 久光三澤 正弘
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2021 年 37 巻 1 号 p. 101-105

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抄録

歯ブラシによる咽頭損傷により,重篤な縦隔気腫をもたらした1例を経験した.症例は2歳2か月男児.歯ブラシを咥えて転倒した.歯ブラシの破損はなかった.翌日から発熱と下顎部腫脹を認め近医受診.咽頭粘膜欠損なく,当院耳鼻科へ精査目的で紹介受診.喉頭ファイバーでも穿孔所見なく,熱源精査目的で当科受診となった.室内気で経皮的酸素飽和度(percutaneous oxygen saturation; SpO2)87%と低下し,コンピューター断層撮影(computerized tomography; CT)で深頸部から縦隔にかけて広範な気腫を認めた.低酸素血症を認め,急激な気腫の増悪の可能性があると判断し,小児集中治療室へ転送した.人工呼吸器管理・抗菌薬投与で後遺症なく救命しえた.

歯ブラシによる口腔・咽頭損傷は臨床的に多く遭遇するが,軽症例が多い.身体所見,バイタルサインの増悪所見があれば早期の頸胸部CT検査が重症化の診断,治療方針の決定に有効であると思われた.

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© 2021 日本小児放射線学会
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