日本小児放射線学会雑誌
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特集 第61回日本小児放射線学会学術集会“Collaboration and Progress:協働と進歩”より
小児の感染性腸炎およびその鑑別疾患の画像診断
中井 義知
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2026 年 42 巻 1 号 p. 20-28

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要旨

小児救急において腹痛や下痢を主訴とする患児は日常的に遭遇する.感染性腸炎の診断自体に画像検査は必須ではないが,全身状態不良例や重篤な合併症の評価を目的としてCTが施行される場面は少なくない.放射線科医には,感染性腸炎に典型的な画像所見を理解した上で,非感染性腸炎や外科的疾患を的確に鑑別する役割が求められる.本稿では,まずウイルス性および細菌性腸炎の病態生理を踏まえ,小児腹部感染症における基本的な画像所見を概説した.次に,カンピロバクター,サルモネラ,エルシニア,腸管出血性大腸菌感染症ならびにウイルス性腸炎について,臨床像,病変分布,注意すべき合併症と画像所見を整理した.さらに,鑑別を要する非感染性腸炎として,好酸球性胃腸炎,IgA血管炎,ループス腸炎,クローン病を取り上げ,感染性腸炎との画像的鑑別点を詳述した.小児腸炎の画像診断では,腸管壁の層構造,病変分布および腸管外所見を総合的に評価することが,適切な診断と臨床マネジメントに重要である.

Abstract

Children presenting with abdominal pain and diarrhea are encountered on a daily basis in pediatric emergency practice. Imaging is not required for diagnosis of infectious enteritis itself, but computed tomography (CT) is frequently performed in clinical practice to assess patients with a poor general condition or to evaluate potentially severe complications. Therefore, radiologists need to recognize the characteristic imaging findings of infectious enteritis and to differentiate this condition from non-infectious enteritis and surgical abdominal diseases. In this article, we first review the basic imaging findings for pediatric abdominal infections based on the underlying pathophysiology of viral and bacterial enteritis. We then summarize the clinical features, disease distribution, characteristic imaging findings, and important complications associated with common pathogens, including Campylobacter, Salmonella, Yersinia, enterohemorrhagic Escherichia coli, and viral gastroenteritis. Furthermore, we discuss conditions of non-infectious enteritis that should be considered in the differential diagnosis, including eosinophilic gastroenteritis, IgA vasculitis, lupus enteritis, and Crohn disease, and highlight key imaging features that help distinguish these entities from infectious causes. In imaging evaluation of pediatric enteritis, a comprehensive and systematic assessment of bowel wall layering, disease distribution, and extraintestinal findings is required for accurate diagnosis and appropriate clinical management.

 はじめに

小児救急において,腹痛や下痢を主訴とする患児は日常的に遭遇する.感染性腸炎そのものの診断に画像検査は必須ではないとされているが,実臨床では,全身状態が不良な場合や重篤な合併症の評価を目的として,CTが選択される場面にしばしば遭遇する.

放射線科医に求められる役割は,典型的な感染性腸炎の画像所見を正確に理解した上で,非感染性腸炎や外科的疾患を確実に鑑別することである.特に小児では,適切に症状を訴えることが難しく,症状も非特異的であるため,画像診断が疾患の絞り込みに寄与する場面は少なくない.本稿では,まず小児腹部感染症にみられる主要な画像所見を概説し,次に鑑別を要する非感染性腸炎について詳述する.

 総論:小児腹部感染症の病態生理と画像診断の基本

感染性腸炎は大きくウイルス性腸炎と細菌性腸炎に分けられ,感染の主座および病態メカニズムが異なる.

ウイルス性腸炎(小腸型)は,主にウイルスが小腸絨毛上皮を標的として感染し,吸収不良や分泌亢進を引き起こす病態である.炎症は粘膜表層にとどまることが多く,画像上は腸管壁肥厚が目立たないか,認められても軽度であることが一般的である.

一方,細菌性腸炎(大腸型)では,胃酸や胆汁による不活化を免れた細菌が回腸末端から大腸へ到達し,大腸粘膜に付着・侵入することで,毒素産生や組織破壊を介した炎症反応を惹起する.病理組織学的には,粘膜層を中心とした炎症に伴う血流増加と,血管透過性亢進による粘膜下層の浮腫が生じる.

これらの病理変化は,造影CTにおいて特徴的な層構造として描出される.すなわち,炎症により血流が増加した粘膜層(内層)と固有筋層・漿膜(外層)が強く造影され,その間に位置する疎な組織である粘膜下層(中間層)が浮腫により低吸収を呈する(Fig. 1).この所見は“target sign”と呼ばれ,感染性腸炎における代表的な画像所見である.

Fig. 1  Target sign

炎症により粘膜の血流が増加水分の血管外漏出により疎な組織である粘膜下層の浮腫が目立つ.

また,大腸壁が高度に腫大し,粘膜下層の浮腫によって内腔が狭小化することで,蛇腹状の形態を呈することがある.これは“accordion sign”と呼ばれ,偽膜性腸炎や出血性大腸炎で典型的に認められるが,その他の腸炎でも観察されうる.

なお,正常な腸管壁の厚さは,小腸で3 mm以下,結腸では拡張時に1~2 mm,虚脱時でも5 mm程度とされるが,腸管内容やスライスの当たり方によって変動する.そのため,壁厚の数値のみに依存せず,所見を総合的に評価することが重要である.

日本における小児細菌性腸炎の原因菌として最も頻度が高いのはカンピロバクター(67.3%)であり,次いでサルモネラ(16.9%),エルシニア(9.0%),腸管出血性大腸菌(4.6%)と続く.これら4菌種で全体の97%以上を占め,放射線科医にとっても比較的馴染みのある病原体である.年齢別にみると,1歳以下の乳児における細菌性腸炎の陽性率は約1%と極めて低く,年齢の上昇および食事内容の多様化に伴って陽性率が上昇する傾向にある.したがって,乳児期の腸炎では,細菌性よりもウイルス性やその他の原因を考慮すべき状況が多いと考えられる1)

 感染性腸炎の臨床像と画像所見

本章では,頻度の高い病原体および注意すべき合併症について解説する.原因菌により臨床像や分布に若干の差異はあるものの,画像所見のみから菌種を推定することは現実的ではない.画像診断の主な目的は,感染性腸炎として典型的か非典型的かを評価すること,ならびに合併病変の有無を検索することにある.

1. カンピロバクター腸炎2)

カンピロバクターは小児細菌性腸炎の中で最も頻度が高く,鶏肉の生食などが主な感染源となる.潜伏期間は2~5日で,腹痛,水様性あるいは血性下痢を呈する.画像所見としては,上行結腸を中心とした全大腸性の壁肥厚を認めることが多い(Fig. 2).

Fig. 2  9歳女児 下痢腹痛 造影CT カンピロバクター腸炎

上行結腸から横行結腸にかけて壁肥厚を認める.

注意すべき合併症として,Guillain-Barré症候群(GBS)が挙げられる.GBSの5~41%ではカンピロバクター感染が先行すると報告されており,腸炎発症から1~3週間後に急性弛緩性麻痺として発症する.MRIでは馬尾神経の肥厚および造影効果を認めるが,非造影では指摘が困難な場合があるため,腸炎後に神経症状を呈した場合には造影MRIによる評価が重要である(Fig. 3).

Fig. 3  11歳女児 歩行困難 造影T1WI Guillain-Barre症候群

馬尾の肥厚と造影効果あり.

2. サルモネラ腸炎3)

サルモネラは卵や肉類,爬虫類との接触が感染源となり,潜伏期間は6~48時間と比較的短い.多くは非チフス性であり,画像上は上行結腸優位の壁肥厚や浮腫性変化,少量の腹水を伴うことが多い(Fig. 4).

Fig. 4  9歳女児 下痢腹痛 造影CT サルモネラ腸炎

上行結腸に壁肥厚と浮腫性変化あり.少量腹水を伴う.

重要な合併症として,菌血症(1~7%)に伴う骨髄炎や関節炎(2.5~10%)が挙げられる.これらは腸炎症状から1~3週間後に発症することが多く,大腿骨や脛骨などの長管骨骨幹端を好発部位とする.MRIではSTIR像で高信号を呈するが,画像所見自体は他の骨髄炎と区別がつかないため,先行する腸炎の病歴が診断の鍵となる(Fig. 5).

Fig. 5  7歳 男児 腸炎症状後の膝痛 STIR矢状断 サルモネラ骨髄炎

膝蓋骨に骨髄炎および膝関節炎を示唆するSTIR高信号を認める.

3. エルシニア腸炎

エルシニアは豚肉や井戸水を介して感染し,3~7日の潜伏期間を経て発症する.本疾患の特徴は,回腸末端から盲腸にかけての病変分布と,右下腹部に限局する圧痛である.この臨床像は急性虫垂炎に類似するため,「偽性虫垂炎症候群」とも呼ばれる.

画像上は回盲部の壁肥厚に加え,穿通型でリンパ節に移行しやすく,腸管壁肥厚の程度に比して顕著な所属リンパ節腫大を認める点が特徴であり,回盲部リンパ節炎の主要な原因の一つである(Fig. 6).

Fig. 6  7歳 男児 右下腹部痛 造影CT エルシニア腸炎

a)b)回盲部に壁肥厚およびリンパ節の腫大が目立つ.

4. 腸管出血性大腸菌(EHEC/O-157)感染症

食肉や汚染された食品を介して感染し,3~5日の潜伏期間の後,水様性下痢から血便へと移行する.Vero毒素(志賀毒素)産生による血流障害が病態の主座であり,上行結腸優位に高度な壁肥厚を来す.壁肥厚が20 mmを超えるような高度例では,本疾患や偽膜性腸炎を鑑別に挙げる必要がある.一方で,著明な腸管浮腫に比してリンパ節腫大は軽度であることが多い(Fig. 7).

Fig. 7  10歳台男児 腹痛・血便 造影CT出血性大腸炎(O-157)

上行結腸に顕著な壁肥厚あり.

EHEC感染症で最も警戒すべき合併症は溶血性尿毒症症候群(HUS)であり,感染の6~15%に発症し,特に5歳未満に好発する.下痢出現後3~10日で,溶血性貧血,血小板減少,腎障害の三徴を呈する.Vero毒素がGb3受容体(腎臓や脳に分布)に結合することで細胞障害および血管内皮障害が生じ,微小血栓が形成される.

腎臓の画像所見としては,腎腫大,腎実質の輝度上昇(高エコー),RI値の上昇(>0.8)を認める(Fig. 8a).また,10~50%に痙攣や意識障害などの中枢神経合併症(脳症)を伴い,MRIでは基底核,視床,白質に両側対称性のT2WI/FLAIR高信号やDWI高信号(細胞性・血管性浮腫)を呈する(Fig. 8b, c).急性期の致死率は2~5%とされるが,20~40%が慢性腎臓病へ移行するため,慎重な管理を要する4,5)

Fig. 8  HUS に伴う腎障害・脳症の画像所見

a)HUSによる腎障害 腹部超音波

腎臓の腫大し肝臓と比して輝度上昇を認める.

b),c)HUS脳症 頭部MRI FLAIR

両側対称性に基底核,視床に高信号を認める.

5. ウイルス性腸炎(ノロウイルス・ロタウイルス)

ウイルス性腸炎の代表的病原体はノロウイルスおよびロタウイルスである.2023年以降はノロウイルスが約8割を占め,ロタウイルスはワクチン定期接種化の影響により数%まで激減している.

画像所見としては腸管内容液の貯留が目立つ一方,粘膜表層の炎症にとどまるため壁肥厚は軽微であり,target signを伴うことは少ない(Fig. 9).

Fig. 9  10歳 男児 造影CT ノロウイルス感染症

腸管内容物は目立つが,壁肥厚は軽度にとどまる.

ロタウイルス感染症の注意すべき合併症として尿管結石が挙げられる.感染に伴う脱水や高尿酸血症を背景に,感染後5~7日で微細な尿酸アンモニウム結石などが尿管膀胱移行部に形成され,腎後性急性腎不全を来すことがある.乳幼児のウイルス性胃腸炎後に腎機能低下や不機嫌が持続する場合には,単純CTや超音波検査により腎腫大,水腎症,微細石灰化の有無を評価すべきである.

 鑑別診断:感染性腸炎と類似する非感染性腸炎

画像診断の重要な役割の一つは,保存的治療で軽快する感染性腸炎と,治療方針の異なる非感染性腸炎を鑑別することである.本章では,好酸球性胃腸炎,IgA血管炎,ループス腸炎,クローン病を取り上げ,それぞれの鑑別点について述べる.

1. 好酸球性胃腸炎(Fig. 10
Fig. 10  12歳 女児 慢性的な腹痛 造影CT 好酸球性腸炎

小腸に広範な粘膜肥厚および,びまん性腹水を認める.

好酸球性胃腸炎は,消化管への好酸球の異常浸潤を特徴とし,小児では学童期に多い.末梢血好酸球増多を約70%で伴い,腹痛や嘔吐などの症状が慢性的に経過する.病変の主座により粘膜型,筋層型,漿膜型に分類されoverlapがあり所見は多彩となる.胃から小腸,特に十二指腸や近位小腸を侵し,粘膜型では広範な粘膜肥厚,漿膜型ではびまん性腹水が特徴的である.筋層型では層構造が不明瞭化する.病変が上部消化管優位である点や,慢性経過に伴う著明な粘膜肥厚が感染性腸炎との鑑別点となる6)

2. IgA血管炎(Henoch–Schönlein紫斑病)(Fig. 11
Fig. 11  4歳 女児 腹痛 造影CT IgA血管影

十二指腸下行部や水平部に軽度の浮腫性変化を認める.

IgA血管炎は全身の小血管へのIgA沈着を特徴とする血管炎であり,4歳前後に好発し,男児に多い(約2:1).下肢の紫斑,関節痛,腹痛が主要症状であるが,約10%では紫斑出現前に腹部症状が先行するため,画像診断が重要となる.

消化管病変は十二指腸,空腸,回腸末端に好発し,粘膜および粘膜下層の浮腫や壁内出血による壁肥厚を来す.腸重積の合併は1~5%に認められる.また,約20%の男児で陰嚢痛を伴い,超音波検査では精巣上体腫大,陰嚢壁肥厚,血流亢進が認められる.さらに,稀ではあるが,腰背部の脊柱起立筋や皮下組織に左右対称性の浮腫性変化を認めることがある7)

3. ループス腸炎

ループス腸炎は全身性エリテマトーデス(SLE)に伴う血管炎であり,若年女性に好発する.SLE診断時の約13%に合併し,空腸および回腸を広範に侵す.画像上はtarget sign(71%)や腹水(78%)を高頻度に認める(Fig. 12a).

Fig. 12  13歳 女児 腹痛 嘔吐 造影CT ループス腸炎

小腸に浮腫状変化を認め,target signを呈するが,粘膜肥厚は目立たない.

腹膜の肥厚や腹水がやや目立つ.

感染性腸炎との鑑別点として,ループス腸炎では漿膜側の炎症が主体となる傾向があり,造影CTにおいて粘膜面よりも漿膜面の増強が感染性腸炎と比して相対的に目立つ場合がある(Fig. 12b).多量の腹水や,ループス腎炎・膀胱炎の合併所見も診断の一助となる8)

4. クローン病

クローン病は全層性の慢性肉芽腫性炎症であり,10~20歳代の若年者に好発する.病変は全消化管に生じうるが,回腸末端に好発し,非連続性病変(skip lesion)を特徴とする.急性期にはtarget signを呈することがあるが,典型例では全層性炎症および線維化を反映して腸管壁の層構造が不明瞭となる.これは,層構造が保たれることの多い急性感染性腸炎との重要な鑑別点である.

活動期には腸間膜脂肪組織の混濁(creeping fat)や,腸間膜動静脈の拡張によるcomb sign(約58%)を認める(Fig. 13).さらに,肛門病変,瘻孔,狭窄などの合併症の有無を評価することが重要である9)

Fig. 13  12歳 女児 腹痛 嘔吐 単純CT クローン病

単純CTではあるが,腸管影は高吸収濃度を呈し壁肥厚に比して腸管の層構造がはっきりしない.腸間膜動静脈の拡張と周囲脂肪織濃度が目立つ(comb sign).

 結語

小児の腸炎を評価する際には,腸管壁の層構造(target signの有無および性状),病変分布(小腸型か大腸型か,十二指腸・近位空腸優位か,回盲部優位か),ならびに腸管外所見(腹水,リンパ節腫大,脂肪織変化,他臓器合併症)を体系的かつ総合的に評価することが重要である.

画像診断は感染性腸炎の確定診断に必須ではないものの,病態評価および非感染性腸炎の鑑別診断において,臨床診療上重要な役割を担う.

文献
 
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