2026 年 42 巻 1 号 p. 53-60
新生児の消化管疾患の診断においては,腹部単純X線や消化管造影検査といった被ばくを伴う検査が標準的であり,新生児の消化管超音波検査はまだ一般的であるとは言い難い.新生児は体格が小さく,脂肪組織も少ないため,体表からの消化管までの距離が短く,高周波の空間分解能の高いエコープローブで消化管の詳細な評価を行うことが可能である.新生児消化管疾患の診断における消化管超音波検査の有用性の報告は多数見られ,腸管血流の評価に関してもドプラ法の有用性が報告されている.一方で,新生児におけるドプラ法は,体動や啼泣の抑制が難しいこと,息止めができないこと,高頻度振動人工換気法(HFOV)施行時にはアーチファクトが発生してしまうことなどのために正確な評価が困難であることが少なくない.そういった背景のもと,新生児の消化管超音波検査における血流評価の有用性と限界について検討する.
Background: Imaging modalities involving radiation exposure, such as plain abdominal X-ray and contrast studies, remain the standard approach for diagnosis of neonatal gastrointestinal disorders. In contrast, gastrointestinal ultrasonography in neonates has yet to become widely adopted.
Rationale: Because neonates have small body sizes and minimal adipose tissue, the distance between the body surface and the gastrointestinal tract is short. This allows for detailed visualization of the bowel with excellent spatial resolution using high-frequency ultrasound probes. Numerous studies have reported the usefulness of gastrointestinal ultrasound in diagnosis of neonatal gastrointestinal diseases, including its value in assessing intestinal blood flow using Doppler techniques.
Challenges: Doppler evaluation in neonates often poses difficulties: it is challenging to suppress body movement and crying, breath-holding cannot be performed, and high-frequency oscillatory ventilation (HFOV) frequently causes artifacts that interfere with accurate assessment.
Objective: In this context, we aim to investigate the utility and limitations of Doppler blood-flow assessment in neonatal gastrointestinal ultrasonography.
高周波の超音波検査は空間分解能が高い一方で,減衰しやすいために深部までの評価が困難である.しかし,新生児は体格が小さいために高周波リニアプローブで腹腔内消化管の大部分を評価可能である.そのため,新生児の消化管は最も超音波検査が有用な臓器系の一つであると考えられる.
実際に新生児の消化管超音波検査の有用性は複数報告があり,血流評価のドプラ法についても,壊死性腸炎,腸回転異常/中腸軸捻転,食物蛋白誘発性胃腸症で報告されている1–3).しかし,新生児消化管超音波検査におけるドプラ法には弱点がある.それはアーチファクトの存在である.新生児では体動・啼泣の抑制が困難な場合が多く,息止めもできない.高頻度振動換気法(HFOV)による呼吸管理を行っている場合は,常に1秒間に10回前後の振動が全身に加わってしまう.そのため,新生児消化管超音波検査におけるドプラ法は有用性があるものの,使用できない場面が少なくないので,ドプラ法は参考所見の一つとし,Bモードを中心とした評価が重要である.本章ではこういった背景のもと,新生児診療で出会う頻度の高い疾患を中心に,症例ベースで新生児の消化管超音波検査の具体的な使用方法について論述する.
症例は完全大血管転位の男児.日齢1より人工乳による経腸栄養を開始し,日齢2にバルーン心房中隔裂開術(BAS)を施行した.日齢5に体重増加を促進する目的に経腸栄養を低出生体重児用ミルクに変更したところ,日齢6に頻脈,多呼吸が出現した.身体所見上,腹部は膨満だったが色調不良はなく,血液ガスでは乳酸値の上昇(9 mmol/L)を認めた.血液検査では血小板低下や炎症反応上昇は認めなかった.心臓超音波検査で心腔内に多量の高エコーを伴うガス像が認められた.腹部レントゲンでは門脈気腫が認められ,腸管気腫も疑われたが,free airは認めなかった.腹部超音波検査(Fig. 1, Movie 1)では肝臓内に高エコーの門脈気腫が複数見られ,回腸や結腸を中心に腸管拡張,蠕動低下に加え,腸管壁に沿って高エコーの気腫が認められた.腹水の混濁はなく,壊死性腸炎(NEC)Bell分類IIBと診断され,保存加療を開始した.翌日,腹部膨満は残存し,右下腹部は一部がやや硬い状態だった.血液ガスは改善したが,白血球・血小板の低下,CRPの軽度上昇(白血球1,900/μl,血小板12.5万/μl,CRP 1.60 mg/dl)を認めた.腹部単純X線では門脈気腫は消失し,free airも認めなかった.腹部超音波検査(Fig. 2, Movie 2)では,門脈気腫は消失したものの腸管気腫が残存しており,加えて腸管血流がほぼ消失していた.さらに,腸管近傍に混濁を伴った腹水が出現しており,腸管の状態は増悪しており,穿孔に至る可能性が高いと判断し,緊急手術の方針とした.手術所見(Fig. 3)では腸管虚血・腸管壁内気腫が広範囲に認められ,肉眼的な穿孔所見はなかったが,切迫破裂の所見も伴っており,減圧目的に腸瘻を造設した.消化管穿孔に至る前に外科的介入のできた症例だった.

A:肝臓内に高エコーの門脈気腫が複数見られた.
B:右下腹部の回腸は,腸管拡張に加え,腸管壁に沿って高エコーの腸管気腫を複数認めた.
Movie 1:腸蠕動低下も見られた.

A:右下腹部の回腸の壁には高エコーの腸管気腫が残存しており,腸管血流がほぼ消失していた.
B:腸管近傍に混濁を伴った腹水(黄矢印)が出現していた(Movie 2も参照).

A:腸管虚血・腸管壁内気腫が広範囲に認められた.
B:肉眼的な穿孔所見はなかったが,切迫破裂の所見(黄矢印)も伴っていた.
NECは未熟な腸管に低酸素血症や浸透圧の高い経腸栄養などの要素が加わることで腸管の壊死性変化が生じたものである.症状は非特異的で,治療はまず保存加療だが,改善に乏しい場合や腸管穿孔を伴った場合に外科的治療が必要になる.NECの病態進行を把握する上で,超音波検査所見は非常に有用である4).初期のNECでは腸管の炎症に伴い,腸管壁肥厚,腸管壁血流シグナル亢進,腸管蠕動低下が見られる.進行し,腸管防御機構が破綻し,細菌が腸管壁内に移動しガス産生すると,気腫を生じる.さらに病態が進行し消化管が壊死すると,腸管壁の菲薄化や血流シグナルの消失が認められ,腸管穿孔もしくはその直前では,炎症性物質の漏出や腸管内容物の漏出による混濁した腹水や,free airが見られるようになる.ドプラ法が有用であるのは腸管壁の血流シグナルの評価においてである.NECでの腸管壁血流シグナル亢進所見は腸間膜動静脈が描出されるY pattern,腸管周囲全体のびまん性炎症を反映したRing pattern,Kerckringひだに沿ってシグナルが見られるZebra patternが報告されている5).このうちZebra patternは非特異的であると報告されている6)が,経験的に他の2つの所見も他の疾患でも見られる.血流の亢進を捉えるには,こういった所見に加えて日々,正常な新生児の腸管血流のドプラに見慣れておく必要がある1).また血流シグナルの欠如は手術の施行や保存加療の失敗と強く関連する重要な所見の一つである7,8).低流速の血流を見逃さないために,スケールを2.9 cm/s以下にすることが推奨されている9).これらのドプラ所見を取れなくても,Bモードを用いた所見を組み合わせることで,病態がどこまで進行していることを評価し,治療方針を決定することができる.また超音波検査は繰り返し評価できるという利点があるので,一度方針を決めたのちに時間を空けて繰り返し再評価することで,方針が正しいか確認することが可能であり,非常に重要な点である.壊死性腸炎には重症度分類である,Bell分類があり,もともと身体所見,腹部単純X線所見で構成されていたが,近年この分類に超音波検査所見も組み込まれ報告された(Table 1).今回の症例では,明らかな門脈気腫が見られたため,IIBと判断したが,翌日に血流シグナルの低下に加えて混濁した腹水も見られたために穿孔の疑われるIIIB相当であると判断し,手術の方針とした.
| 病期 | 分類 | 腹部エコー所見 | 腹部X線所見 |
|---|---|---|---|
| IA | 疑診 | 2.5 mm以下の腸管壁肥厚 | 正常もしくは軽度腸管拡張 |
| 腸管血流シグナル亢進 | |||
| 腸管蠕動低下 | |||
| IB | 疑診 | 2.5 mmをこえる腸管壁肥厚 | 正常もしくは軽度腸管拡張 |
| わずかな腸管壁内気腫 | |||
| 腸管蠕動低下もしくは消失 | |||
| IIA | 軽度 | 明らかな腸管壁内気腫 | 腸管拡張 |
| わずかな門脈気腫 | 腸管壁内気腫 | ||
| IIB | 中等度 | 明らかな門脈気腫 | 門脈気腫 |
| IIIA | 重症(穿孔なし) | 腸管血流シグナル低下もしくは欠如 | 明らかな腹水 |
| 腸管壁菲薄化 | |||
| 腸管周囲の混濁のない腹水 | |||
| IIIB | 重症(穿孔あり) | 腹腔内遊離空気(free air) | 腹腔内遊離ガス |
| 混濁した腹水 |
症例は在胎35週で出生した早産児.日齢9より嘔吐が出現し,日齢10に胆汁性嘔吐となったため,当院に転院搬送された.身体所見,血液ガス,血液検査では乳酸の軽度上昇がある以外に明らかな異常は認めなかった.腹部単純X線は,前医で胃泡の拡張とガスレス像が認められたが,当院転院時には明らかな異常は認めなかった.腹部超音波検査(Fig. 4, Movie 3)では上腸間膜静脈(SMV)は上腸間膜動脈(SMA)の1~2時方向と逆位で,血管周囲を取り囲む軟部組織として描出される腸間膜に肥厚が目立っていたものの,whirlpool signはなく,SMAの血流は保持されていた.しかし,十二指腸水平部がSMA・腹部大動脈間に描出できなかったことから,中腸軸捻転の明らかな所見はないものの,腸回転異常の所見があるため,中腸軸捻転を否定しきれないと考え,1時間後に再検査を行った.再度施行した腹部超音波検査(Fig. 5, Movie 4)では,先ほど腹腔の左へ向かっていたSMA/SMVが右へ向かうようになり,whirlpool signも見られたが,SMAの血流は保持されていた.またwhirlpool signをよく観察すると十二指腸が巻き込まれ鳥の嘴のように細くなるbird’s beak signを認めたことから中腸軸捻転と診断し,血流は保持されているものの,X線でも前医から当院への転院時に所見が大きく変わったことも合わせると,捻転・解除を繰り返している可能性が考えられたため,手術の方針とした.

SMV(白矢印)はSMA(黄矢頭)の1~2時方向と逆位で,腹腔の左へと走行していた.血管周囲を取り囲む軟部組織として描出される腸間膜(黄矢印)に肥厚が目立っていたものの,whirlpool signはなく(Movie 3参照),SMAの血流は保持されていた.

A:SMA(黄矢頭),SMV(白矢印)が腹腔の右へ向かうようになり,whirlpool signも見られた(Movie 4参照)が,SMAの血流は保持されていた.
B:十二指腸がwhirlpool signに巻き込まれ鳥の嘴のように細くなるbird’s beak sign(黄矢印)を認めた.
手術所見(Fig. 6)では,腸管は180度回転しており,Ladd靭帯を認めたため,診断に至った.明らかな虚血の所見はなく,虚血に至る前に外科的介入をすることができた一例だった.

腸管は明らかな虚血の所見はなかったが,180度回転しており,Ladd靭帯を認めたため,診断に至った.
中腸軸捻転を起こしうる腸回転異常はmalrotation typeで,本来右下腹部まで至るはずの回盲部が正中上腹部に位置し,Ladd靭帯を形成することで,これを軸にして腸が捻転する.また中腸軸捻転の発症は過半数,報告によっては約3分の2が新生児期とされる10–12).中腸軸捻転は腸管虚血が進行すると腸管切除が必要なリスクがあるため,迅速な診断・治療が求められる.中腸軸捻転の超音波検査所見で最も有名なwhirlpool signは感度・特異度ともに高く10),またドプラを併用することでwhirlpool signの同定が容易となり,診断の確信度が高まると報告されている13).また十二指腸が捻転に巻き込まれ鳥のくちばし様に細くなるbird’s beak signも高い感度・特異度を誇る14).またSMVの絞扼・うっ血がおこることで腸間膜が肥厚する所見も認められる15).本症例のように当初whirlpool signはないものの腸間膜の肥厚もあり判断が難しい場合は,そもそも腸回転異常があるのかを確認することが重要である.腸回転異常の超音波検査所見で重要なのはSMA/SMVの位置関係だが,29%で正常な位置関係との報告もあり感度は高くない16).SMA/SMVの位置関係よりも十二指腸水平部の走行の方が診断精度が高く,症例数は限られており,多施設での検証が今後の課題であるものの,Nguyenらの報告では感度100%とされている17).また回盲部の位置も所見の一つだが,約20%で正常位置に見られると報告18)されており,そもそも新生児の回盲部の描出は難易度が低くないので,必須ではないと考えている.腸回転異常の診断は通常造影検査で行われるが,小児では超音波検査が感度・特異度とも同等であると報告2,19,20)されており,新生児においては超音波検査の方が有用であると報告されている10)ため,ぜひ超音波検査を活用したい疾患の一つである.
症例は正期産の男児で,出生歴に特に問題なく,混合栄養で何度か嘔吐が見られていたため入院を継続していた.人工乳のみの栄養となった日齢8より嘔吐が出現し,日齢10には胆汁性となったため転院搬送された.身体所見,血液ガス,血液検査では明らかな異常はなく,腹部X線でも明らかな異常は認めなかった.腹部超音波検査(Fig. 7, Movie 5)では腸管血流の亢進を認めたことに加え,腸間膜に肥厚が見られた.空腸壁の肥厚やS状結腸の壁肥厚も伴った.腸管蠕動も低下していた.超音波検査で中腸軸捻転などの緊急疾患を否定し,本症を疑った.加水分解乳による栄養で問題なく経過し,退院前の人工乳の負荷試験が陽性だったため,最終診断とした.

A:腸管壁血流の亢進を認めた.
B:腸間膜の肥厚(黄矢印)と空腸壁の肥厚(白矢印)を認めた.
C:S状結腸の壁肥厚も伴った.
Movie 5:腸管蠕動も低下していた.
本症はいわゆる新生児のミルクアレルギーで,IgEが介在しないことから一般的な牛乳アレルギーとは違う病態で,消化管症状が前景に立つことが多い.重要なのは本症には,迅速かつ感度・特異度の高い検査がないという点である.そのため我々は超音波検査が参考所見の一つになると考え活用している.本症の超音波検査所見として報告されているのは,腸間膜肥厚,小腸壁肥厚,大腸壁肥厚,腸蠕動低下,腸管壁血流シグナル亢進であるが,いずれも非特異的な所見である3,21).その中でも腸管壁血流シグナルの亢進に関しては,ImageJなどの画像解析ソフトを用いて定量化することで感度・特異度が高かったとする報告がある3).しかし,このソフトを用いることができない場合は運用が難しい.我々は腸管壁の肥厚や蠕動低下(特に腸管内腔の液体貯留)に加えて,腸間膜の肥厚が見られることが本症に関連した重要な所見であると考えている.腸間膜の肥厚は,前述の中腸軸捻転など緊急性の高い疾患でも見られる所見であるが,超音波検査でこれらが否定できれば,基礎疾患のない新生児では本症を示唆する所見として有効であると考えている.ただし,基礎疾患がない,という点が重要である.先天性心疾患を合併する症例では,静脈うっ滞や低心拍出に起因する腸管・腸間膜の浮腫・虚血でも同様の所見を呈しうる22)ため,本所見のみからNon-IgE-GIFAsを示唆することはできない.
新生児の消化管評価において血流評価・ドプラ法が有用な場面ももちろんあるが,使用困難な状況も少なくなく,主役はあくまでBモードである.一方,新生児では高周波リニアプローブにより詳細な描出が可能であり,ドプラ法に加えてBモード所見を最大限に活用することで,新生児消化管診療をさらに高度なものにできると考える.