精巣捻転は,速やかに捻転解除が必要である.当院では超音波で診断し,用手整復を行っている.診断方法や,用手整復か外科的処置かの選択は病院ごとの適した方法で良い.
精巣捻転の超音波所見は,患側精巣と精巣上体の腫大,精巣長軸の非対称,血流欠損もしくは低下,whirl pool sign,内部エコー変化である.捻転方向は内回りが高いとされ,観音開きに用手整復するのが基本である.精巣内の血流が過血流になり,whirl pool signの消失があれば,用手整復は成功したと判断する.過血流が見られない,もしくは血流がない場合は,不成功の可能性を考える.用手整復の整復方向は正しいが捻転残存している場合,そもそも捻転方向が間違えている場合があり,どちらかを判断する.用手整復は,捻転解除のみであり,外科的処置は,捻転解除,精巣固定,白膜切開が可能である.用手整復後に,速やかに外科的処置に移行するのが理想的である.
Testicular torsion is a urological emergency that requires prompt detorsion. At our hospital, diagnosis is established with ultrasonography, followed by manual detorsion. Ultrasonographic findings for testicular torsion include enlargement of the affected testis and epididymis, asymmetry of the testicular longitudinal axis, absent or diminished intratesticular flow, a whirlpool sign, and alterations within the intratesticular parenchymal echotexture. Manual detorsion is typically attempted to detort toward outward rotation. Successful reduction is indicated by recanalization of blood flow within the intratesticular hyperperfusion and disappearance of the whirlpool sign. If hyperperfusion is absent or recanalization is not absent, reduction failure should be considered, due to residual torsion despite correct rotation or incorrect detorsion. Manual detorsion alone achieves only “detorsion”, whereas surgical detorsion can include detorsion, orchiopexy and/or tunica albuginea incision. Ideally, surgical exploration should follow promptly after manual detorsion.
精巣捻転は,急性陰嚢症のなかで最も緊急を要する疾患であり,6時間以内の捻転解除が求められる1,2).そのため,急性陰嚢症で初めに除外もしくは診断しなければならない病態である.一般的には思春期の男児,つまり9から16歳に多く,通常は疼痛のため検査室に歩いては来れない,つまりストレッチャーで来ることが多い3,4).より若年者発症,つまり5歳前後,の症例では,感覚経路が未成熟なため腹痛や嘔吐など非特異的な症状を呈し,診断まで時間がかかることが多い5–8).診断としては,当院では超音波を用い,その場で用手整復を行っている.超音波で内部エコーの変化を認め,壊死が疑われる場合は用手整復を行わず,外科的処置を行っている.用手整復は,精巣捻転は通常内回りであることが多いことから,通常は観音開き方向に精巣を回転させて整復を行う.しかし,本来整復すべき方向と反対方向,つまり実際の捻転方向が外回りであった場合,に整復してしまった場合に,わずかに残っていた血流をさらに途絶させる危険もあること,また用手整復の成功率も病院ごとに異なることから,精巣を冷やして時間を浪費することなく外科的処置をすべきという意見もある9–13).どちらにせよ,病院ごとにもっとも適した方法を選択するのが良いと思われる.
精巣捻転の超音波所見は,患側精巣と患側精巣上体の腫大,左右の精巣長軸の非対称,血流の欠損もしくは低下,whirl pool sign,内部エコーの変化になる.これらの所見を組み合わせて診断することになる14–20).
・患側精巣と精巣上体の腫大については,還流静脈のうっ滞によると思われ,正常対側精巣との比較が必要である(Fig. 1, 2).精巣捻転の捻転部位は精巣上体より鼠径部よりであるため,精巣上体と精巣が捻転しており,精巣上体も血流欠損と腫大を伴う(Fig. 3, 4, 5)16,19,20).また,精索のねじれにより患側精巣の尾側が持ち上げられるような形となり,左右の精巣の長軸が非対称になる.正常では,精巣は陰嚢内に左右対称にあるが,それが左右対称に画像が撮れない(Fig. 1, 3)16,19,20).
・血流は捻転に伴って,精巣,精巣上体ともに欠損することが多い(Fig. 1, 4).時に,精巣動脈は開存し,精巣静脈だけが捻転によって還流障害をきたすことがあり,この場合は精巣内の血流が保たれることがある19,20).
・Whirl pool signは,精索が捻転している部位を直接描出することである(Fig. 4, 6)21,22).
・内部エコーについては,腫大のみで,内部エコーが浮腫様に見えるだけで,出血壊死などで不均一でなければ精巣温存できる可能性が高い(Fig. 1, 2, 4).内部エコーに不均一があると,精巣壊死をきたしている可能性が高い(Fig. 5, 6)15,17,23).

a.左右の精巣の長軸は非対称であり,左の精巣は血流が欠損し腫大している(矢印).精巣内部エコーは浮腫状の低エコー傾向に見えるが不均一ではなかった.
b.内回りと判断し,用手整復するも血流は回復しなかった.
c.Whirl pool signも残存していた(矢印).そのため,再度360度用手整復した.
d.血流が全体に過血流となり,用手整復が成功したと判断した.

a.左の精巣はやや浮腫状であったが,不均一ではない(矢印).壊死の所見は見られなかった.
b.観音開きに360度用手整復するとわずかに血流が回復したが,過血流ではなかった.
c.精索にwhirl pool signの残存を認めた(矢印).
d.再度用手整復を360度追加すると精巣は過血流となり疼痛もなくなった.用手整復の成功と判断した.

a.左右比べると,精巣の軸は左右非対称である.左は精巣上体もうっ滞のため腫大している(矢頭).
b.徒手整復後,左の精巣の血流は過血流になった.しかし中心部で少し血流が乏しく,血流が欠損して見える(矢印).わずかに経過で左は右に比べ小さくなった.

a.右精索に渦巻き状の構造を認めwhirl pool sign(矢印)を呈している.
b.右精巣に血流は認めないが,内部エコーは不均一ではない.精巣上体も腫大している(矢頭).
c.徒手整復後,精索は浮腫状となっている(矢印).

左精巣は内部エコーが不均一となっており(矢印),壊死が疑われる.精巣上体も腫大し血流がない(矢頭).

a.左精索は渦巻き状のwhirl pool signを認める(矢印).
b.左精巣は,内部エコーが頭側(矢印)でより低エコーとなっている.尾側は実質エコーは浮腫状である(矢頭).
・精巣上体炎 急性陰嚢症で重要な鑑別診断となる.精巣上体の腫大と血流増加がみられる19,24,25).
・精巣垂捻転 精巣もしくは精巣上体に付着した垂の捻転による.血流欠損を呈した垂を描出する19,26,27).
・突発性陰嚢浮腫 基礎疾患を伴わない陰嚢の突発性の浮腫である.好発年齢は精巣捻転より若い19,28–30).
・全身疾患に伴う急性陰嚢症 川崎病やIgA血管炎,ムンプス感染などで急性陰嚢症様の症状を呈し,精巣炎や陰嚢浮腫を生じることがある19,31,32).
当院では基本的には小児外科医,泌尿器科医が対応するが,来院に時間がかかる場合は,救急医が施行することもある.精巣捻転は内回りの頻度が高いとされ,観音開き,もしくはopen bookの方向となる外回りに用手整復するのが基本である.疼痛の解除をもって用手整復の成功と判断することが多い9,11,33,34).
2. 超音波を用いた用手整復補助診断後,用手整復開始前に以下の点について評価する12,16,19,35).
・捻転方向 これはwhirl pool signの始まりがどの方向に向かっているかで評価するが,検査者の慣れた方法で確認するのが良いと思われる.内回りが典型的ではある(Fig. 1, Movie 1).内回りか外回りかは,ほとんどが内回りというわけではないことから,とくに,典型的な方向と異なる外回りであるかどうかが重要である21,35–37).
内回りに360度捻転していると判断した.腫大した精巣上体を認める.
Download Video・捻転の程度 ねじれの回転数をおおよそ予想する.360度の一回転しているものなのか,よりねじれの程度がつよい720度捻転のようなものなのかを判断する19,37).
1)用手整復の成功・不成功の判断用手整復が始まると,360度用手整復後などの処置中の間で再度画像評価をすることがある.最終的に血流が回復し過血流になり,whirl pool signの消失があれば,用手整復は成功したと判断する(Fig. 1, 2, 3).まだ,血流が過血流とならない,もしくは血流が回復しない場合,用手整復が不成功であるかどうかを判断する必要がある.これらの処置中に疼痛の増加,改善は重要な評価項目になる9,33,34).
①用手整復の成功疼痛の消失,whirl pool signの消失,患側精巣の過血流が見られる(Fig. 1, 2, 3).腫大も次第に改善する.患側精巣の過血流が見られることは用手整復の成功を意味する38).一方で過血流が精巣全体に及ばず,辺縁のみにとどまることも経験する(Fig. 3).このような場合,用手整復後に精巣が委縮することがあり,いわゆるコンパートメント症候群のような状態,もしくはすでに内部に不可逆な障害をきたした状態になっているのではないかと推測される39–41).
②用手整復の不成功疼痛の残存,過血流が見られない,もしくは血流回復がない(Fig. 1),もしくは乏しい場合(Fig. 2)に考える必要があり,以下の可能性がある.
・整復方向は正しいが,捻転の残存
精巣血流は戻り始めていることもある.Whirl pool signの残存を調べるために精索を確認する(Fig. 1, 2).捻転後の精索は浮腫状でありpseudo-massとよばれるような,むくんだ状態となっていることが多い16,19,35).残っていれば,その程度が,処置前より減少していれば,再度追加で用手整復を行う.
・そもそも捻転方向が間違えている
精巣の血流は,通常消失したままである.Whirl pool signの確認をし,捻転の程度の増悪の有無と,再度捻転方向の評価をする.しかし,捻転した精索は浮腫状であるため,評価は次第に難しくなってくる(Fig. 4, Movie 2).
捻転後の精索は浮腫状となっている.
Download Video用手整復を行っている場合に,以下の点において時折問題となる.
・痛みが残っているが,精巣自体の血流は回復した場合.
精索は捻転用手整復後は浮腫で肥厚し,かつ蛇行していることが常であるが,必ずwhirl pool signの消失を確認する(Fig. 4, Movie 2).悩ましければ外科的手術を進めているが,過血流であると通常は捻転は解除されていると判断し,少し時間をおいて身体所見や超音波検査を再検査することが多い.
・血流が少ししか回復せず過血流にならない場合.
痛みの有無が重要であり,痛みがあれば外科的処置を薦めている.痛みがなく,whirl pool signの消失している場合は,血流回復が遅れている場合を考える.少し待って再検査するか,白膜切開を薦めることになる.再検査も,あまり時間を置かずに30分から1時間前後でやることになるが,症例ごとに判断することになる.
3. 用手整復と外科的処置の違い用手整復は,捻転解除のみであり,外科的処置は,捻転解除,精巣の固定,そして白膜切開が可能である.精巣の固定は,精巣捻転は通常Bell clapper奇形と言われる漿膜付着部の異常によって生じやすいということから,精巣の再捻転を防止するため精巣を固定する42,43).また,精巣腫大に伴う圧の上昇,コンパートメント症候群を防ぐため精巣白膜を切開することができる39,40).用手整復後の再捻転は起こりえる44).また,白膜切開は,精巣の温存に寄与する可能性が報告されている39,40).そのため,用手整復後に,速やかに外科的処置に移行するのが理想的ではあるが,個々の病院におけるマンパワーや,手術室の使用状況などを鑑みて,適切な方法を選択することになる.
4. 特殊な精巣捻転や血流障害・精巣捻転自然解除後
急性陰嚢症として受診し,検査時に疼痛が改善している場合に想定される疾患である45).解除後早期であれば,精巣の腫大や精巣の過血流,精索の浮腫が残存している.時間がたちこれらが消失している場合は,自然解除という診断が困難である.また,精索の浮腫のためwhirl pool signの有無の評価が難しいときも経験される16,38,46).
・精巣部分壊死
精巣動脈の末梢のみが壊死することがあり,その場合精巣は頭側のみが壊死することになる(Fig. 6)47,48).精巣捻転のほか,精巣上体炎でも起こることが報告されている47,48).なぜ部分壊死となっているかを評価する必要があり,精巣上体の腫大部に血流があるかどうかが鑑別に重要となる.
精巣捻転は,できるだけ早い捻転解除が必要な病態である.当院では超音波で診断したのち,超音波を併用しながら用手整復を行うことが多い.診断方法や,用手整復の適応の有無は,施設により異なっていると考えられ,自施設に適した方法で最善の捻転解除をするのが望まれる.