抄録
熱赤外データによる土壌水分の推定に関する報告では入力パラメータとして, 地表温度の最大値, 最小値日最大土壌温度と気温の差, 地表温度の日較差およびThermal Inertiaなどのパラメータが提案されていた。
本稿では地表温度と土壌水分の関係を地表エネルギー収支と土壌物理の観点から明確にした後, 標準化した地表温度変化率という新しいパラメータと多変量解析の手法にもとづく土壌分推定モデルに関する検討結果を報告する。
第2, 3表に示された結果から, 他のサンプル又は水田土壌のサンプルに比較すると関東ロームの特に夏に収集されたサンプルでは高い相関が認められる。さらに、同一土壌では地下10cmの土壌水分より5cmのそれに対する相関の高いことが示されている。
地表温度又はその変化率と土壌水分 (深度5cm, 10cmのいずれの場合でも) との回帰分析によると, 他の季節では回帰係数の変動が認められるが, 夏季の関東ロームのサンプルから推定精度のよいモデルが開発された。
従って, たとえば適切な場所と観測時期などのようなある制約の下においては, 将来, 地表温度上昇率から土壌水分の定量的推定が可能と考えられる。