抄録
低い空間分解能で, 高い広域同時性を有するリモートセンシングデータの利用が見直される傾向にある。ところが, 低空間分解能データを利用する際の問題点として幾何補正用のGCP計測の難しさがある。従来手法の目視判読では地形の特徴が低分解能のため不明瞭である。よってGCP計測における誤差は大きいものと考えられる。
本論文は低空間分解能画像でも高精度幾何補正に対応できるGCP抽出法についての研究報告である。また, 幾何補正の対象内容としては, 2つのディジタル画像間の重ね合わせについて研究したものである。具体的には, 画像から閉領域を抽出し, 抽出閉領域の重心点座標をGCPとして用いる方法を考察し, 実験を実施した。この方法によれば, 目視判読の難しい先端部等の座標を求める必要はなくなった。GCP座標は閉領域の形状にて決定される。そこで, 閉領域の形状の安定抽出が, 重心によるGCPの精度に影響を及ぼすこととなる。そこでセンサの分解能等が多少変化しても重心点変化が少ないものが望まれる。実験の結果, 閉領域形状は上下左右が対称であるほど, 重心点は変化しにくい傾向を有することが判明した。さらに高い対称性形状を有する閉領域を抽出することにより, 高い精度がGCPが得られる事が確認された。誤差に関しては従来法の目視判読による場合, GCPにおける平均二乗誤差で約0.2~0.5画素となった。これに対し重心による方法は約0.04~0.06画素となった。誤差は約1/5~1/8程度に減少した。このことから, 閉領域重心点を基準点として選択する幾何補正方法は従来法と比較して幾何補正精度が高い事が確認された。