日本惑星科学会秋季講演会予稿集
日本惑星科学会2003年秋季講演会予稿集
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最優秀発表賞選考セッション  10/8(水)12:55~15:30(オーラル)、15:45~17:00(ポスター)
Magellan SAR画像輝度から推定される金星の溶岩チャネルBaltis Vallisの横断地形プロファイル
*押上 祥子並木 則行
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p. 13

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抄録
金星の溶岩チャネルBaltis Vallisは、全長約6800 kmのcanali-typeに分類される溶岩チャネルである。溶岩チャネルの形成過程には、constructionalとerosional、そしてこれらの組み合わせの3つが考えられる [Baker et al., 1997]。Canaliは主としてconstructional起源とされているが、SAR画像からはconstructional起源の溶岩チャネルに特徴的な堤防をはっきりと見出すことができない。また、その深さはレーダーのforeshorteningの効果から数十mと見積もられているが、解像度75 mのFMAP画像では誤差が大きく疑わしい [Komatsu et al., 1992]。そこで本研究では、Magellan FMAP画像の輝度データに対し、Muhlemanの後方散乱関数 [Muhleman, 1964]を用いることでBaltis Vallisの横断地形プロファイルを作成し、その形状の特徴からBaltis Vallisの形成過程を考察する。本研究で用いたMagellan FMAP画像の各ピクセルに割り当てられた輝度値は、SARの後方散乱の強さ(後方散乱係数)を表している。一般に、この後方散乱係数を支配する要素は、地表面の傾斜(レーダー入射角)、粗さ、地表物質の誘電率である。Muhlemanの後方散乱関数は、金星表面の後方散乱の強さをレーダー入射角の関数として表したものであり、地表面の粗さと誘電率は、ローカルなパラメータとして関数中の係数α、βに含まれている。チャネル周辺の滑らかな平原領域において、領域の平均面が水平面に等しいと仮定すると、レーダー入射角の異なるstereo-looking、left-lookingの2つのFMAP画像を用いて係数α、βが決定できる。また、平原領域を流れるチャネルの地表物質の誘電率や地表面の粗さが周囲と同一であると仮定してこのα、βをチャネルに適用すると、輝度データから求められる後方散乱係数の値から、ローカルな散乱面に対するレーダー入射角が求まる。Magellan SARでは水平面に対するレーダー入射角は緯度によって与えられている。さらにチャネルの流れている方向も考慮すると、FMAP画像のピクセル毎に地表の東西傾斜角が求まる。これを東西方向に積分することで横断地形プロファイルが作成できる。しかし実際には平均面が東西、南北に1_から_2°前後傾斜していても、結果には大きく影響しない。 stereo-looking、left-lookingの2つのFMAP画像から、横断地形プロファイルを作成した。なお、ノイズによる影響を減らすために、南北20 pixel(およそ1.5 km)で平均したデータを用いている。その結果、同じ地点に対して両画像から得たプロファイルは一致しないが、チャネルの深さや幅といった主要な構造については矛盾のない結果が得られている。チャネルの全体的な特徴として、深さは平均約50 mとなった。プロファイルの形状からは、ほとんどの場合堤防らしい構造ははっきりと認識できない。また、チャネルの底面は周辺よりも数十m低いことから、Baltis Vallisの形成過程は主として侵食である可能性が示唆される。
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© 2003 日本惑星科学会
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