抄録
地球型惑星は、複数回の火星サイズの巨大天体衝突が起こったと考えられている。これまで、我々は、巨大天体衝突時の大気散逸について研究をしてきた。その結果、相当量(50-90%)の大気が生き残ることがわかった(Genda & Abe, 2003)。これにより、ネビュラ中で微惑星が集積して火星サイズに成長するまでに捕獲した原始大気が、地球型惑星の大気の起源に重要な役割を果たすことを示した。太陽組成の希ガスを適度に多く含んだ原始大気は、現在の金星の大気を説明するのには都合がよいが、地球にとっては、都合が悪い。したがって、地球だけ大気を効率良く吹き飛ばす何らかのメカニズムが必要である。そこで、惑星表面の海の存在に注目する。巨大天体衝突時に海が存在すると、海が蒸発することによって大気の大規模散逸が起こる可能性がある。本講演では、海が存在する時の大気散逸量を計算し、海が存在しない場合と比較し、現在の金星・地球大気の違いをどこまで説明できるか議論をする。