日本惑星科学会秋季講演会予稿集
日本惑星科学会2003年秋季講演会予稿集
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オーラルセッション1 10/8(水)9:15~10:30
TiCナノ微結晶と赤外線吸収スペクトルとの相関
*木村 勇気池上 亜紀美鈴木 仁志墻内 千尋
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p. 2

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抄録

近年、カーボンリッチなAGBスターの中間赤外スペクトルに見られる特徴的な20.1 μmの起源について盛んに議論されている。最近、1.1 nmサイズのTiCクラスターにおいて20.1 μmに吸収が見られるという報告がなされ、TiCに候補物質としての注目が集まった。現在、これに対し否定的な結果が多く出ており、盛んに議論が行われている。バルクのTiC結晶においては、中間赤外領域に吸収はまったく見られない。隕石中から抽出されたTiCのサイズはおよそ50 nmであることから、我々は50 nmサイズのTiCグレインを作成し、その赤外線吸収スペクトルを測定した。その結果、9.5と12.5 μmに特徴的なピークが見られたが、20.1 μm付近にはまったく吸収は見られなかった。
ガス中蒸発法を用いてTiCを直接作製する方法では、数ナノメートルサイズのTiCを作製するのが困難なため、今回、Ti粒子上に真空蒸着法を用いてカーボンを蒸着し、界面での反応を用いてナノオーダーのTiC微結晶を作製した。また、その粒子を700℃で60分間加熱することにより、TiC微結晶を成長させ、微結晶サイズと赤外線吸収スペクトルとの関係を明らかとした。さらに、膜厚の異なるTi- C粒子を用意し、カーボンマントル層の赤外吸収スペクトルに与える影響を調べた。まずカーボン膜厚3 nm程度のTi- C粒子では、Ti粒子表面におよそ3 nm 程度のTiC微結晶が生成し、赤外線吸収ピークは14.3 μmに見られた。その粒子を加熱すると、Ti粒子中へのカーボンの拡散によって、TiC微結晶はおよそ6 nm 程度に成長し、14.3 μmの吸収強度は減少した。次に、カーボン膜厚を、6 nm程度まで増加させたTi- C粒子では、約4 nm のTiC微結晶が生成していたが、この赤外スペクトルには吸収が見られなかった。これはTiC微結晶が厚いカーボン層に覆われているためであると考えられる。この粒子を加熱するとTiC微結晶が成長し、表面に現れる。この時、赤外吸収を測定すると14 .5 μm に吸収が見られた。3 nmサイズのTiC微結晶においても、20.1 μm付近に吸収ピークは見られなかった。

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