日本惑星科学会秋季講演会予稿集
日本惑星科学会2003年秋季講演会予稿集
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ポスターセッション1 10/8(水)15:45~17:00
月・惑星探査用二重収束質量分析器の開発
*西口 克上田 康平豊田 岐聡石原 盛男大竹 真紀子杉原 孝充交久瀬 五雄
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p. 25

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抄録
惑星探査において,大気や表面物質の元素組成,元素の同位体存在比はその星の起源や進化を知る上で重要な情報である.質量分析装置は試料の元素組成や同位体比の測定に適しており,惑星探査機搭載用の観測機器として利用価値は大きい.現在我々のグループでは,将来の月・惑星探査機への搭載を目指し質量分析装置の開発をおこなっている.質量分析装置の種類には同位体比測定に対する定量性のよい磁場型を採用し,消費電力に配慮し永久磁石を用いることとした.永久磁石を用いる場合,検出器の前にコレクタースリットを置き加速電圧を掃引する分析計タイプと,検出器に位置検出器を用いる分析器タイプに分かれるが,広い質量範囲のイオンを同時検出可能である点で定量性の向上に優位である分析器タイプを選択し,Mattauch-Herzog型イオン光学系での設計をおこなった.Mattauch-Herzog型では二重収束点が一直線上に並ぶため,この直線上に位置検出器を置くことにより広い質量範囲を分解能を落とすことなく同時に検出することが可能である.今回,将来の月探査機への搭載を目指し装置の性能を設定した.測定対象に極氷や,クレーター岩石中の希ガス,レゴリス中の希ガスなどを検討しており,HからArまでの測定を考え質量範囲を1から50uとした.質量分解能はHeの同位体比測定が可能であるように500と設定した.サイズは200×150×100mmとし,重量を3kg以下とする.以上のコンセプトにより,ラボラトリモデルを設計,製作した.装置は,イオン源,電場,磁場,位置検出器から構成される.今回,測定質量範囲を1から50uとしているが,磁石の大きさ,検出器の大きさ等の問題があり,一度に検出する質量範囲を7倍とし,加速電圧を変化させることで質量範囲を切り替える方法を採用した.イオン源には,電子イオン化EIイオン源(JMS-HX110用,日本電子(株))を用いた.電場は縦方向の収束性を考慮して球面電場とした.電場半径は50mmであり,電極間隙は10mmである.永久磁石には,NEOMAX(39SH,住友特殊金属(株))を用い,脱ガスに配慮して表面にTiイオンプレーティングをほどこした.ヨーク,ポールピースには低炭素鋼SS400を用いており,磁束密度は0.57T,磁極間隙は4mm,有効磁場半径が25から75mmである.位置検出器には,蛍光体を塗布したファイバオプティクプレート(FOP)がカップリングしてあるマイクロチャンネルプレート(MCP)(F4301-04,浜松ホトニクス)を用い,蛍光板の発光をCCDにより検出するシステムを採用した.MCPアッセンブリのサイズは55×8mmであり,蛍光体材料はP46である.MCP,CCDともに二次元の検出が可能であり,検出感度の向上に配慮している.また,焦点合わせの調整のために検出器の移動機構を設けた.まず,真空容器の外に光学レンズ系を介してCCD(S7010-1007,浜松ホトニクス(株))を設置し,残留ガスの2次元スペクトルを得た.CCDのサイズは25×3mmである. CCDの駆動および制御には,CCDマルチチャンネル検出器ヘッド(C7021,浜松ホトニクス(株)),MCDコントローラー(C7557,浜松ホトニクス(株))を用いた.m/z=28のピークの半値幅で,質量分解能200が得られている.次に,FOPとCCDの間での光の反射の影響による分解能の低下を改善するため,FOPの後段にCCD(S7175,浜松ホトニクス(株))を直接カップリングした.CCDは,MCPアッセンブリのサイズに適合したもの用いるため,CCD駆動回路系,およびデータ取得システムをPCIボードを用いて開発した.発表では,外付けCCDのスペクトルと,直付けCCDでのスペクトル,および装置の性能評価の詳細を報告する.
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© 2003 日本惑星科学会
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